研究課題/領域番号 |
21K01310
|
研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
後 房雄 愛知大学, 地域政策学部, 教授 (20151855)
|
研究分担者 |
伊藤 公雄 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (00159865)
石田 憲 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (40211726)
伊藤 昌亮 成蹊大学, 文学部, 教授 (80548769)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 冷戦終結 / 政治改革 / 小選挙区制 / 政権交代のある民主主義 / ポピュリズム |
研究実績の概要 |
最終年度においては、研究参加者各自の研究成果をまとめつつ、相互に研究交流を行うことにより、研究成果の集大成を行なった。研究期間全体を通じて、冷戦終結後の日本とイタリアの政治変動について、いくつかの共通点と相互の相違点を明らかにすることができた。 まず、共通点については、第一に、冷戦終結後の政治の流動化によって、あらためて両国の戦後政治が内外の冷戦構造によっていかに強く刻印、制約されていたかが示された。日本においては社会党、共産党によって構成された戦後革新勢力が社会主義を志向していたこと、イタリアにおいては野党第一党が共産党であったことによって、両国ともに国内政治自体において冷戦対立が構築されていたことは、アメリカ、イギリス、西ドイツなどと比較して重要な特徴である。 第二に、それだけに、冷戦の終結は両国の国内政治の極度の流動化をもたらした。それは、両国の政治に「政権交代」という要素を導入するなどの新しい可能性を開いたと同時に、従来のある種の均衡を崩すことによって、ポピュリズム勢力の台頭、移民差別、ヘイトスピーチなどの否定的要素の顕在化をももたらした。 次に、相違点については、第一に、イタリアにおいてはキリスト教民主党を中心とする五党連合がすべて大規模汚職の摘発などによってほとんど壊滅的打撃を受けたため、フォルツァ・イタリアなどの新興ポピュリズム政党がその空白を埋めることになったが、日本においては、自由民主党がリクルート事件や1993年政権交代によってもそれほど大きな打撃を受けることなく復活し、自公連合によってその後も長期政権を実現したという顕著な違いが指摘できる。 第二に、イタリアでは、イタリア共産党が民主党へと大転換し、中道左派の中心的政党として定着したのに対し、日本においては、社会党、共産党ともに自己改革に失敗し、民主党という新党が辛うじてその役割を果たすしかなかった。
|