研究課題/領域番号 |
21K01312
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
高橋 進 龍谷大学, 公私立大学の部局等, フェロー (30136577)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 記憶 / 植民地支配 / イタリア / ファシズム / ヨーロッパの内戦 / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
研究の年次計画に沿って進めているが、部分的な変更も行っている。初年度にファシストの植民地支配やバルカン占領、レジスタンスなどに関する基本的な文献の収集を行った。 論点整理に関しては、初年度に開始したイタリア・ナショナリズムについて、イタリア国家統一からファシズムを経て戦後までのイタリア・ナショナリズムの形成と変容に関して、ファシズムとレジスタンスの記憶と想起、戦後共和国における歴史認識の問題を中心に研究をまとめ、共著として刊行した(「イタリア・ナショナリズムの歴史と現在 反ファシズムとネオ・ナショナリズム」渡辺博明編『ポピュリズム、ナショナリズムと現代政治』ナカニシヤ出版、2023年、85-105頁)。イタリア・ナショナリズムの包括的な歴史研究がこれまで存在しないなかで、学術的に重要な貢献であると考えている。 また、イタリアの第二次大戦への参戦について、ムッソリーニの参戦動機と膨張計画、植民地化計画を中心に、イタリア帝国主義の形成と膨張目標についてまとめ、論文として発表した(「それでもムッソリーニは参戦を選んだームッソリーニ論余滴」『日伊文化研究』61号、2023年4月、16-28頁)。 イタリアを訪れての資料調査・研究交流を計画していたが、新型コロナ(COVID-19)の感染拡大のために実施できなかった。 2022年がローマ進軍・ムッソリーニ政権成立100年であったため、イタリアなどでファシズム関係の新たな研究が次々と公表されたので、それらの文献の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にアフリカ植民地支配に関する論点整理を行う計画であったが、あまり進めることができなかった。その理由は、イタリアの国家統一から戦後までのナショナリズムの歴史的展開の研究に集中したためである。このテーマは研究課題の「歴史認識」「記憶」「ファシズム分析」の重要な前提であり、その研究成果をまとめ、共著の中で発表することができた。このテーマについては、日本では既存の研究成果がなく、貴重な学術的な貢献となったと考えている。 また、イタリアの植民地支配については全面的な研究には到達していないが、第二次大戦への参戦動機とファシズムの帝国主義的膨張についての重要な論点整理を行い、植民地支配研究の基礎を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
イタリアのアフリカ支配の研究と並行して、バルカン占領・戦争についての研究を進め、論点整理を行う。 また、今年度の前半にバルカン占領・戦争に関する研究動向調査、文献収集のために、サラエボやベオグラードなどを訪れる計画である。後半には、コロナ流行のために実施できていなかった、イタリアを訪れての一次資料の収集と研究交流を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ(COVID-19)の感染拡大のために、イタリアを訪問しての資料収集や研究交流を実施できなかったため、計画していた海外出張旅費の使用がなかったため。 2023年度はコロナの感染が収まったようなので、バルカンの現地での研究文献収集、イタリアを訪れての資料収集や研究交流を行う計画である。
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