研究課題
最終年度である令和5年度、研究代表者と各研究分担者はこれまでの共同研究を踏まえ、各自の成果をまとめることに専念するため、研究会の開催を秋の1回に絞った。2023年度の研究会として、11月24日に神戸大学国際文化学研究科において、研究協力者である池田直樹氏(神戸大学助教)の著作『ピーター・L・バーガー――分極化するアメリカ社会と対峙した社会学者』(ナカニシヤ書房、2023年)の合評会を開催し、日本では一般に社会学者として知られているバーガーの、ルター派としての信仰心に篤い知識人としての思想と行動を共同研究のかたちで検討した。とくにバーガーと、かれの盟友でありつつも袂を分かち、ルター派からカトリシズムに転向したリチャード・ジョン・ニューハウスとの対立に焦点を当てることで、戦後アメリカにおける宗教保守の形成と展開について知見を深めることができた。この最終年度、研究代表者は、ポストリベラル右派の動向の分析に当初の予定以上に力点を置いて考察と分析をおこない、その過程において、ベンチャーキャピタリストとして一般には名高いピーター・ティールを宗教保守として明確に位置づけたうえで、現在のアメリカの政治動向において最も重要な知識人のひとりとして捉える必要性を結論として得た。具体的には、ゼロから1を生み出すことに固執するかれの起業家としての信念は、ハルマゲドンの到来を恐れずに歴史を加速させることを重視する、ティール独自の黙示録解釈に立脚したものであるという結論を得た。当初、本研究は福音派に焦点を当てることになるものと仮説的に想定していたが、研究期間全体を通じて本研究は、「ポストリベラル右派」の知識人たちが、カトリックや正教会を含めた多様なキリスト教の立場に立脚していることを知見として獲得した。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件)
アメリカ史評論
巻: 41 ページ: 53-58
政治思想研究
巻: 23 ページ: 460-461