研究課題/領域番号 |
21K01326
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 隆 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50446605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国政治 / 政治エリート |
研究実績の概要 |
本研究の目的に対し、初年度にあたる2021年度は、主に以下の実績があった。 第一に、中国の政治エリート研究と今日の中国政治分析への貢献である。本研究では、習近平という政治家に焦点を当てて、地方指導者時代にまで遡った習氏の個人研究と、現在の中国政治の動向分析の2つを分析の視野に入れている。これらについて、今年度は計4本の論文・資料紹介と計1冊の共著書を発表した(すべてreseachmapに掲載済み、https://researchmap.jp/ta_suzuki)。 このうち、地方指導者時代の習近平については、収集した資料を分析した結果、これまで知られていなかった、1987年11月の習近平と岡崎嘉平太の会談の事実を明らかにした。折しも2022年は、日中国交正常化50周年に当たる。この節目の年に興味深い史実が発見されたと考える。ほかにも、アモイ時代における政治活動に関して論文をまとめた(近刊)。 現状分析についても、習近平時代の特徴を毛沢東時代、鄧小平時代(鄧小平、江沢民、胡錦濤の統治時期)との比較の観点から分析した。さらに、最近の中国政治の動きを、習近平の父権主義的リーダーシップの部分的復活の試みとして考察した。 これらの業績の多くは、学術誌のみならず、ウェブサイトや一般誌への掲載など、広く社会に公開されている。また、本研究で得られた知見を基に、新聞などのメディアにもコメントや解説などを行い、研究の成果を広く社会に還元することに努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2021年度は主に、以下の3つを実施する予定であった。 a)習近平の地方指導者時代の任地のうち、福建省(任期:1985年6月~2002年10月)について、福建省、及び、同省と政治経済的に関係の深い台湾での資料調査(主に中国語新聞の所蔵・閲覧調査) b)上記に関連して、日本国内での資料調査 c)福建時期における習近平の政治論について、論文発表または学会報告を行う 上記のうち、c)については、習近平の福建省アモイ勤務時期(1985~1988年)について、論文と資料紹介の文章をまとめた(資料紹介文は公表済み、論文は近日公開)。a)とb)は、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、国内外への出張・資料調査ができなかった。その代わり、対応策として、大陸発行のいくつかの中国語新聞について、マイクロフィルムの購入と内容分析によって、現地調査に部分的に代えることとした。 以上の結果、総合的にみて、当初の計画案に対して、おおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降も、当初の計画案に則して、研究活動を進める。その際、新型コロナウイルス感染症の状況を勘案しながら、2021年度に実施できなかった中国・台湾での資料調査の不足分を、2022年度以降の研究活動の中で補うことを念頭に置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大のため、2021年度の当初計画で予定していた中国と台湾での資料調査が、まったく実施できなかった。そのため、海外出張のため旅費、および、それに関連する人件費と謝金が支出されなかった。代わりに、海外出張での調査対象としていた中国語現地新聞について、マイクロフィルムの作成を業者に依頼し、これを購入することで、研究活動を部分的に補完した。マイクロフィルムの作成・購入は、比較的に高額であったが、研究の進捗を着実に促進した。 しかし、それでも旅費として見積もっていた一部資金が余った。これは次年度以降の海外出張の旅費、資料購入費として使用する見込みである。
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