研究課題/領域番号 |
21K01335
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
高山 裕二 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (90453969)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ボナパルティズム / ルイ=ナポレオン / 第2帝政 / 民主的専制 / サン=シモン主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀フランスに生まれた「ボナパルティズム」を広く検討することで、民主主義国家の政治(執行)権力が専制化する過程とその構造、およびそれに対抗する勢力の論理を、思想史的かつ実証的に解明することを目的にする。今年度は、そのうち前者について、主に執行権力の優位を確立し経済成長を押し進めたルイ=ナポレオンの思想と行動(ボナパルティズム)を検討した。 具体的には、ルイ=ナポレオンの著作、『ナポレオン的観念』(1839年)や『貧困問題の根絶』(1844年)、『著作集』(1852-54年)の諸論考や演説等を、彼に大きな影響を与えたと考えられるサン=シモン主義者の思想に照らして分析した。また、実践的なサン=シモン主義者であり、彼のブレーンでもあったミシェル・シュヴァリエの第2帝政の政策形成における役割、とりわけ英仏通商条約(1860年)の締結における役割を、彼の政治経済思想を踏まえて再検討した。そして、これらの研究成果を、著書として発表する準備を進めた。 加えて、第2帝政崩壊後、人種主義と結びついた「ボナパルティズム」の変種について検討する理論枠組みの形成に着手した。それは、今日の「ナショナル・ポピュリズム」の発生要因を解明することに役立つ研究成果であると言える。具体的には、この分野の代表的な先行研究である、歴史家のミシェル・ヴィノックの諸研究を整理する一方で、研究史に欠落している視点を、19世紀フランスの自由主義思想を検討することで提示し、その成果を国際学会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(1年目)は、ボナパルティズムがサン=シモン主義の影響を受けて形成されたことを明らかにするという、当初の研究実施目標を概ね達成することができた。その成果を一部論考として公表するとともに、さらなる発表に向けた準備を進めたが、著書の刊行には至らなかった。また、19世紀末に人種主義と結びついたボナパルティズムの変種を検討する理論枠組みの形成に着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は、ルイ=ナポレオンの著作以外の関連文書(行政文書・書簡等)の収集・調査を重点的に遂行する。帝政の政策が実際にどれほど皇帝の「思想」に基づいてなされたのかを解明するには、政策過程における彼の発言や私信の検討は欠かせない。そのため、フランス・パリにある国立中央古文書館に保管されている関連文章を、フランスへ出張し渉猟する予定だったが、現下のCOVID-19の感染状況を考慮すると、その計画を予定通り遂行できるかどうかは不透明である。そこで、ネット等で入手できる資料を収集して出張の準備を進めるとともに、1年目の成果と合わせて著書の出版の準備を着実に進める。また、2年目のもう一つの課題である「リベラル連合」の検討を進める。特に、共和派のジュール・シモンやエミール・オリヴィエの著書の検討に着手する。
|