研究課題/領域番号 |
21K01335
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
高山 裕二 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (90453969)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ボナパルティズム / 民主的専制 / 民主主義 / 独裁 / ナポレオン3世 / 第二帝政 / サン=シモン主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀フランスに生まれた「ボナパルティズム」を広く検討することで、民主主義国家の政治(執行)権力が専制化する過程とその構造、およびそれに対抗する勢力の論理を、思想史的かつ実証的に解明することを目的にする。今年度は、前者について継続して分析を進めるとともに、その成果の発表の準備を遂行し、また後者については研究に着手した。 具体的には、1年目に研究対象にしたルイ=ナポレオンの著作以外の関連文書(行政文書・書簡等)の収集・調査を遂行しながら、第2帝政における対抗勢力のテクストの分析を進めた。特に、「リベラル連合」と呼ばれる対抗勢力、なかでも共和派のジュール・シモンやエミール・オリヴィエの著書の検討に着手した。と同時に、ネット等で入手できる資料を収集し、翌年度に予定している海外出張の準備を進めるとともに、1年目の成果と合わせて著書刊行の準備を着実に進めることができた。 加えて、本研究のもう1つの課題である、第2帝政崩壊後の「ボナパルティズムの変種(variant)」の検討を前に進めた。1年目に着手した「ボナパルティズムの変種」を検討する理論枠組みを用いて、20世紀のボナパルティズムとみなされるゴーリズム(ドゴール主義)形成の政治過程とその構造を検討したうえで、第2帝政におけるそれとの類似と相違を整理した。その結果、近代民主主義における統治形態(専制)としてのボナパルティズムの一般的な特徴を明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(2年目)は、第2帝政の収集・調査に着手するとともに、第2帝政における対抗勢力のテクスト分析を進めるという、当初の研究実施目標を概ね達成することができた。その成果を公表するため、著書の刊行を着実に進めるとともに、「ボナパルティズムの変種」を検討した成果については論文にまとめた(2023年度著書の一章として公刊予定)。ただ、昨年度に想定した通り、海外(フランス)に出張することができなかったため、ルイ=ナポレオンの著作以外の関連文書(行政文書・書簡等)の収集・調査はネット等で入手できる範囲で行い、十分に遂行することはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目は、(1)「ボナパルティズムの変種」の分析を進めるとともに、(2)フランスに出張することでネット等では入手できないルイ=ナポレオンの著作以外の関連文書(行政文書・書簡等)の収集・調査を遂行し、最終的に、(3)これまでの成果を著書にまとめ、公刊の準備を完了する。「ボナパルティズムの変種」については、当初予定していた第3共和政期のブーランジェ事件やドレフュス事件で暗躍した「ボナパルティスト」の思想よりも、20世紀のボナパルティズムであるゴーリズム(ドゴール主義)の考察を優先し、継続的に遂行する。と同時に、第3共和政期のその批判者であるエミール・ゾラのような作家の分析も援用し、民主的専制を成立させる社会心理を具体的かつ実証的に描き出す一方で、その対抗言説を整理し、その成果を著書として発表する準備を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末の書籍の割引等により、端数が残ったため。
|