『メディア研究』所載の公表論文では、公示日直前と投票日直後の全国パネル世論調査に基づき、選挙期間における各種のマスメディアとインターネットメディアとの接触が政治意識におよぼす影響を考察する。安全保障争点に対する賛否や重要性の評価へおよぼすメディアの影響に焦点を当てる。この際、メディアとの接触状況および各政治主体に対する感情温度など、支持政党ごとに異なる行動・意識を考慮する。同論文の公表に先んじて、2023年5月に開催された日本選挙学会研究会において同論文の内容を発表した。『年報政治学』所載の公表論文では、2022年参院選の選挙期間におけるメディアの利用が安全保障政策をめぐる世論の支持状況についての予想、および同政策に関して自身と賛否や重要性の評価が異なる第三者へ抱く感情に与える影響を解明する。この際、政治意識の形成過程を考慮した上での推定精度の向上を図り、Targeted Maximum Likelihood Estimator(TMLE) に基づくSuper Learnerを用いた因果媒介分析を行う。研究期間全体として、予定どおりの世論調査および分析を実施できた。特に、機械学習・Super Learnerに基づく因果媒介分析を試みるなど、新規の研究手法に取り組んだ点は研究の特長である。また、主題に関してはウクライナ戦争と安全保障という焦眉の急と言える問題を分析した点は、東アジアの不安定な現状に鑑みたとき、現実的な意義を有するであろう。
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