本年度においては、アメリカの地方自治制度であり、市長-議会制、議会-マネージャー制についての文献レビューを行い、日本の東京都23区を対象とした分析を行った。2018年ICMA survey researchによると、市長-議会制は38.2%、議会-マネージャー制は48.2%を占めている。市長-議会制は、弱市長制と強市長制に分けられる。弱市長制は汚職や政治不信への高まりを受けて、アメリカ南西部の小さな町や中程度の市で残っているものである。他方で、強市長制は、市長は予算を作成し、執政府に対して幅広い任免権や解職権を持つ。また、議会によって可決された条例案に対する拒否権も持つ。議会-マネージャー制は、議会が都市機能や予算、計画、契約承認など政策決定に関する最終責任を負う仕組みである。議員はシティ・マネージャーからの情報や提案を受け、市の行政を監視する。議員は、地域社会と自治体を橋渡しする役を担っている。議会は、シティ・マネージャーと協働で政策立案を行い、その実行をシティ・マネージャーに委ねる。こうしたアメリカ地方自治制度の分類はある程度の説得力を持つものの、政府のパフォーマンスへの影響を測定することには限界があるため、別の指標が開発されるようになっている。それは都市憲章が市長に与える権限の大きさ等であるが、より良い指標として特定のものが存在している訳ではないことが明らかとなった。 東京都23区における分析では、女性議員割合の増加は、請願件数、福祉・教育関連の請願採択率にプラスの影響を与えるものであった。また左派議員は請願件数、請願採択率、福祉関連請願件数・福祉関連請願採択率にプラスの影響を与えるものであった。女性議員の増加や左派議員の増加により、政策形成に影響を及ぼし得ることが確認できた。
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