研究実績の概要 |
本研究では、国際紛争・国際危機が起こるメカニズムを解明する一助として、紛争の発生と終結を予測するモデルを構築することを目的としている。特に、大量のニュース記事から抽出されたテキストデータを二次加工することで、政治アクター間の対立と協調の諸相を体系的・定量的に把握することで、紛争の発生と終結を予測することを試みる。第一段階では、ニュース記事から一定の手続きを経て抽出されたICEWSデータから見出しを抜き出し、体系的にトピックを抽出することを行った。第二段階では、国際紛争のデータベースであるInternational Crisis Behavior (ICB)のデータに基づいて、二国間のペア(ダイアッドと呼ぶ)の間に紛争・危機が発生・終結するタイミングをコード化した。 最終年度である本年度は、第三段階として、第一・第二段階で得られたデータを統合し、紛争発生の統計モデルを構築するとともに、分析結果の学術誌への投稿を行う予定であった。当初予想していなかった事態が2点生じ、研究に多少の遅れが出た。第一に、2023年にICBデータベースに大幅なアップデートがあり、第二段階のデータを見直す必要が出た。第二に、軍事同盟・有志連合がICB紛争に与える影響について、先行研究をサーベイし、本の一章としてまとめる仕事を行った。この成果は、2024年9月にA Century of International Crisis, 1918-2018として、University of Michigan Pressから出版される予定である。当初の段階で本研究プロジェクトが予定していた成果ではないが、本研究プロジェクトの第二段階から派生して生まれた成果であると言える。この2点のために当初の予定より遅れが出てしまっているが、本研究の第三段階の成果は論文の形にまとめ、2024年以降学術誌に投稿していく予定である。
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