研究課題/領域番号 |
21K01361
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際移動 / シティズンシップ / 重国籍 / 第3国定住 / 歴史性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、政策立案において、①国境を越えるヒトの移動を「問題(a problem)」とみなす固定観念からの離脱、それを踏まえて目指される、②ヒトの国際移動をめぐる政策(入国管理政策、国籍・帰化政策、庇護政策)を一体として検討・評価する枠組みの構築である。これらの目的の達成のため、研究代表者の専門である英国の事例を取りあげる。 2021年度は3年の研究期間の初年度にあたる。そこで、庇護政策、国籍・帰化政策、入国管理政策それぞれについて、研究代表者の研究の現状を問う目的の論文を発表した。まず庇護政策に関しては2本の論文を発表した。第1に、関西大学法学研究所の研究叢書に発表した論文では、英国政府が庇護政策の焦点を「第3国定住」受入れへと移すことで、受け入れる難民の選別を目指していること、また、そのことと庇護政策の目標として掲げる「管理」とを同一視していることを明らかにした。第2に、『批判的安全保障論』に寄稿した論文では、庇護申請者と移民の区別を曖昧にすることで、あたかも前者が非正規移民と同様であるような認識をうみ出す政策の問題点を指摘した。 国籍・帰化政策に関しては、「軽いシティズンシップ」理論に基づく政策とその結果に関する論文を発表した。近年、重国籍者を許容する国が増えている。これを背景に、一方では高度技能・高所得者の受入れを積極的に進める国が増えている。その一方で、安全保障を理由に、重国籍者の国籍剥奪も容易化されている。 くわえて、Dieter Gosewinkel(ベルリン自由大学教授)を代表とする研究チームの一員として、英国の入国管理・庇護・国籍政策の歴史的変容に関する報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、日本語の論文を3本発表し、国際セミナーで報告を一度実施することができた。そのため、成果発表という点では順調に進展しているといえる。 しかし2021年度はコロナ禍で、海外での調査を一度も実施することができなかった。研究代表者は、これまでほぼ毎年英国で一次資料の調査を行ってきた。2021年度はこれまで蓄積してきた資料を用いて、成果発表をすることが可能だった。しかし2022年度は、英国国立公文書館やオックスフォード大学移民政策研究所などに赴き、資料収集を行うことが不可欠である。にもかかわらず、コロナ禍に加え、ウクライナ情勢の影響を受け、英国でのインタビュー調査の実施が遅れることも考えられる。その際はインターネットを介した調査に切り替えていく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、英国での資料収集およびインタビュー調査を予定している。しかし現在、ヨーロッパはコロナ禍に加えて、ウクライナ情勢のために先行き不透明である。もし現地調査が難しい場合は、日本国内の研究者との交流や知見の提供を受けることに重点を置き換える必要が出てくるかもしれない。研究代表者は、国境を越えるヒトの移動に関する研究および帝国史研究など、本研究と密接に関係している複数の研究会に参加している。それらの場所で研究発表を続け、研究交流を深めていく。さらに国内だけでなく、海外の研究誌への投稿も続けていく。 2023年度には、海外での研究活動をこれまで以上に活発に進めていく予定である。
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