研究課題/領域番号 |
21K01375
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小川 裕子 東海大学, 政治経済学部, 教授 (00546111)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際政治学 / グローバル・ガバナンス / 国際規範 / SDGs / ジェンダー平等 |
研究実績の概要 |
本研究は、多極化時代を象徴する規範である持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, 以下SDGs)の実効性確保メカニズムの解明を目的とする。SDGsは17の目標、169のターゲットから構成される、いわば多数の規範を抱き合わせた「複合規範」である。複合規範は選択的受容が起こりやすく、実効性の確保が難しい。そこでSDGsの達成度が世界17位と先進国の中で大きく後れを取っている日本を事例とする。そして17目標の中で、日本の最も達成度の低い目標5(ジェンダー平等)を中心として検討を行う。 本年度は、安倍内閣がSDGsの目標5(ジェンダー平等)にどのように政策的対応をしたかを検討した。安倍内閣は、SDGsへの対応として、2015年に女性活躍推進法を成立させた。しかし女性活躍推進法は、女性の管理職の登用を促進することを主眼としており、大多数の女性を救済対象としていない。つまり、女性活躍推進法は、ジェンダー平等化規範の実質的内面化とは程遠い。なぜこのように実効性を欠く女性活躍推進法を成立させたのか。本研究は、ジェンダー平等化規範の特性に注目した。ジェンダー平等規範は複数の基準から構成される複合規範である。受容する側は、複数の基準の中から都合の良い基準のみを選択的に受容することが可能になる。安倍内閣は世論に配慮し、ジェンダー平等規範を立法化しなければならない、しかしながら、実効性を伴う改革は難しい。そこでジェンダー平等規範を構成する複数の基準のうち、安倍内閣に都合の良い基準のみを立法化することにした。つまり規範の複合性が選択的な受容を可能にし、実効性を欠く政策的対応となったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本政治学会研究大会にて「国際規範の実効性―ジェンダー平等と日本社会―」の研究報告を行った。本研究報告では、安倍政権のSDGs政策を中心に検討した。そしてジェンダー平等規範の複合性が、安倍政権の選択的な規範の受容を可能にし、実効性を伴う政策的対応につながらなかったことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、安倍政権内外の政治アクターおよび国内社会の組織や市民の意識や行動を包括的に検討し、国際規範の実効性向上を阻害する要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルスの影響により、参加予定であった国際学会に参加することが不可能となったため、未使用の旅費が生じた。当該助成金は、新型コロナウイルスの感染が収束し、国際学会への参加が可能となり次第、国際学会への参加のための旅費として使用する予定である。
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