研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に続き「A Monetary Equilibrium with the Lender of Last Resort」(京都大学の渡辺教授との共同研究)の大幅な改訂を行った。理論モデルを大幅に組み直し、分析の精緻化を行い、さらに政策的に重要な結論を得た。主な政策インプリケーションは以下の5つである。 1:最後の貸手機能の存在は、銀行の準備を減少させ、流動性危機の確率を高めるが、その被害を抑制することが可能となる。2:古典的な最後の貸手機能であるバ ジョット・ルールは、銀行のモラルハザードを引き起こさず、むしろ低金利融資が望ましい。3:銀行のモラルハザードは、中央銀行の拡張的な最後の貸手政策の 存在、情報の非対称性、リスク資産の生産性によって引き起こされる。4:最後の貸手による貸出金利およびヘアカット率の操作はモラルハザードを抑制する上で有効である。5:拡張的最後の貸手政策は、経済厚生の観点から有効である。これらの結果は、既存研究では部分的にしか報告されておらず、これらの新旧の結果を報告した研究は存在していない。特に、モラルハザードの引き起こされるメカニズムを貨幣均衡で示した研究は存在せず、重要な政策的インプリケーションが得られている。本年度はこれらの結果を論文としてまとめ、ワーキングペーパーとしてとして公開した。 A Monetary Equilibrium with the Lender of Last Resort,Tarishi Matsuoka Makoto Watanabe,CESifo,Munich,2023CESifo Working Paper No.10439(https://www.cesifo.org/en/publications/2023/working-paper/monetary-equilibrium-lender-last-resort) 来年度は学会や研究セミナーで研究報告を行い、査読付国際雑誌に投稿することを予定している。
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