研究課題/領域番号 |
21K01391
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
宇野 浩司 大阪府立大学, 経済学研究科, 准教授 (70506386)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ポテンシャルゲーム |
研究実績の概要 |
企業間競争のように,意思決定者の利害が自分の選択だけでなく他の人の選択からも影響を受ける戦略的状況を分析するためにゲーム理論がある.しかし,ゲーム理論を応用するには様々な困難に直面する.本研究では応用・実証研究を行う上で直面する困難を「ポテンシャル」に注目して乗り越えようとすること,また,必要に応じてポテンシャルアプローチに関する知見を新たに得ることを目的とする. 今年度は,研究課題『ゲーム理論におけるポテンシャルアプローチと実証研究への応用』と共に進め,企業の参入行動に関する観察から需要を構造推定するための研究をおこなった.一般に,参入ゲームには複数の理論予測,(ナッシュ)均衡が存在する.そのため,参入行動の観察データとモデルの理論予測とを一対一で結びつけられず,そのままでは推定できない問題に直面する.この問題を対処するために,本研究は,ポテンシャルを最大にする均衡はいくつかの意味で「もっともらしい」というゲーム理論における既存の知見に注目し,複数の均衡が存在する場合,ポテンシャルを最大にする均衡が選ばれると仮定したアプローチを採用する.他方,本研究以外にも複数均衡へ対処したさまざまな既存研究がある.その中に,複数の均衡がある場合,企業の連結利益を最大にする均衡が選ばれると仮定したアプローチがある. 本年度は,この既存のアプローチと本研究のアプローチとの関係について考察した.その結果,企業間の外部性が対称ならば,参入ゲームはポテンシャルゲームであるが,さらに単一市場参入ゲームでは,ポテンシャルを最大にする均衡と企業の連結利益を最大にする均衡は同一となることを示した.しかし,企業間の外部性が企業間で異なるが加重対称的であるならば,参入ゲームは加重ポテンシャルゲームであり,(加重)ポテンシャルを最大にする均衡と企業の連結利益を最大にする均衡とは異なりうることがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポテンシャルを最大にする均衡と企業の連結利益を最大にする均衡の関係に関する本年度,得られた知見は,単一市場,または地域間で相互に関係し合わない独立な多市場に関することである.しかし,本研究が最終的に推定したい市場は地域間でも相互に関係し合う多市場であり,そのような市場に,本年度,得られた知見が成立するかは未知であるため.
|
今後の研究の推進方策 |
次の二つの方向で対応を考えている.一つの対応は,引き続き,地域間でも相互に関係し合う多市場におけるポテンシャルを最大にする均衡と企業の連結利益を最大にする均衡の関係を簡単な数値例によって探り,一般化を目指すことである.もう一つの対応は,一旦,地域間で相互に関係し合わない独立な多市場に関する構造推定を行うことである.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度,研究打ち合わせのために渡米を計画していたが,コロナ禍により渡米をキャンセルしたため次年度使用額が生じた.その分は,次年度の渡米,または,オンラインによる研究打ち合わせのために必要な機器の購入への使用を計画している.
|