研究課題/領域番号 |
21K01391
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
宇野 浩司 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70506386)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ポテンシャルゲーム |
研究実績の概要 |
2023年度は,企業が各地でチェーン展開する産業の需要・費用構造,店舗集積効果を構造推定するための手法の開発に取り組んだ.本研究の目的は,この手法を用いて,企業合併や産業政策といった反実仮想が企業行動や社会厚生へ及ぼす影響を予測できるようになることである.そして,開発した手法を日本のコンビニエンスストア産業の出店データに用いて,需要・費用構造,店舗集積効果を点推定し,企業合併がもたらす影響を予測することを目指している. 本年度は特に,多市場参入ゲームのポテンシャル関数の最大化に注目して構造推定を行うことを試みた.しかし,この問題は制約なし二次二値最適化問題に帰着でき,一般にNP困難である.先行研究で提案されている厳密解や近似解を導出するアルゴリズムでは,扱える企業数や市場数が制限されてしまい,コンビニ市場への適用は難しい.また,近似解を理論予測とするにはゲーム理論としての解釈が困難であることもわかっている. そこで,制約なし二次二値最適化問題の解導出に期待される量子アニーリングの利用を検討した.しかし,解の精度は実行時間と比例し,推定値の精度を上げようとすると,解導出の回数を増やす必要があり,実行時間を減らさなければならず,解の精度が下がるというトレードオフに直面することがわかった. これらの知見から,量子アニーリングによる解導出は、解の精度の観点から見送るのが得策である.しかし,量子アニーリングアルゴリズムがゲーム理論の文脈で人々の行動の動学として解釈可能ならば,将来有用な手法になる可能性があることがわかった.本研究の今後の進展に有用な知見が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,構造推定のために利用するポテンシャル最大化問題の解導出アルゴリズムを確定することを目標としていた.しかし,アルゴリズムとして注目されている有力候補であったアルゴリズムを検討したが到達できなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
構造推定のために利用するポテンシャル最大化問題の解導出アルゴリズムを確定することを目標とする.そのために制約なし二次二値最適化問題の解導出アルゴリズムとして有力な他のアルゴリズムの検討,多地域参入ゲームの個別条件によって特有の導出アルゴリズムは開発できないかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との打ち合わせはオンラインで実行したことと,研究成果を学会報告するまでに研究が進まなかったため,旅費が当初計画より大幅に下回った.研究を効率的に進めるために物品やサービスの購入を計画している.
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