研究課題/領域番号 |
21K01392
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
篠原 隆介 法政大学, 経済学部, 教授 (40402094)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 公共財 / 交渉 / 再交渉 / 自発的参加 / ナッシュ交渉 / ナッシュ・イン・ナッシュ交渉 / 国際河川管理 / フリーライダー問題 |
研究実績の概要 |
2022年度は、公共財供給における国際協力の自発的な構築について研究を行った。公共財供給に関する国際交渉では、その交渉が合意に達した後においても、合意内容の更新のため、再交渉が行われることがある。そのため、本研究では、本交渉後に再交渉が行われうる場合において、公共財供給のための国際協力体制がどの程度、高度に構築されうるのか、について分析を行った。先行研究の多くは、再交渉の影響を分析から捨象し、公共財のただのり動機に起因して、多くの国々が公共財供給に不参加する問題を指摘してきたことに注意したい。
本研究の主要な貢献は、再交渉が行われることで、多くの国々が本交渉に自発的に参加し、パレート優位な公共財供給を実現する可能性を示したことである。本研究のモデルでは、まず各国が本交渉へ参加するか否かの決定を行い、その後、参加国により本交渉が行われ、最後に、本交渉の参加国と不参加国が再交渉を行う。この過程において、本交渉の参加国は、再交渉を有利に進めようとするために、本交渉の合意内容を戦略的に操作し、これにより本交渉への参加国数が増加しうることを、本研究では明らかにした。国際河川管理では、流域国の多くが自発的に管理協定に参加する事例がある。本研究のモデルは、国際河川管理の交渉過程と多くの部分を共有するため、本分析結果は、国際河川管理における協力関係の構築を説明しうるものであり、この意味において事実解明的な側面を強く持つ。
本研究成果は、論文"Voluntary participation in a negotiation providing public goods and renegotiation opportunities"としてまとめ、学会・研究会で報告済みであり、現在は、英文査読誌への投稿に向けて準備をしている。本研究は、平井俊行教授(法政大学)との共同研究として行われた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際公共財供給の協力体制の研究に関しては、おおむね順調に進んでいる。国際交渉においては、その交渉代理人を戦略的に選定し、交渉を通じて実現する資源配分をパレート非効率にするという戦略的委任問題が発生するが、本科研費課題の次のステップとして、この戦略的委任行動が、国際交渉の合意内容にどのような影響を与えるか、について分析する。交渉のゲーム理論モデルについては様々存在するが、可能な限り簡素なものを構築し、分析の負荷を下げることを試みる。交渉モデルの構築の過程において副産物として得た研究成果は、Journal of Institutional and Theoretical Economics誌に既に受理され公刊予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた成果をベースとして、公共財供給に関する国際交渉への自発的参加問題の分析を進める。その一方で、自発的参加問題と戦略的委任問題の相互依存関係については、引き続き分析を継続する予定である。Shinohara (2021, Environmental and Resource Economics)では、この相互依存について簡易なモデルを使って分析を行っているので、この論文の分析方法を参考にして研究を継続する。研究の分析結果や方法の見直しをする機会として、学会報告や意見交換会などを積極的に利用したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度から引き続き、新型コロナウィルスの感染拡大のため、海外学会での研究成果報告や研究意見交換会を実現するには至らなかった。2023年度に関しては、海外在住の研究者と意見交換を行い、機会を見つけて研究成果を報告することを予定している。そのための経費として、前年度未使用分の科研費研究費を利用する予定である。
|