研究課題/領域番号 |
21K01396
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
代田 豊一郎 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (80783951)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 供給ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、産業間や企業間での供給ネットワーク構造が、マクロ経済学上持つインプリケーションを検討している。その際には、他部門動学的一般均衡モデルなどの手法を用いたアプローチを用いている。本年度の研究では、まず、財の決済手段に注目した多部門動学的一般均衡モデルを構築し、経済において異なる決済手段が併存する場合には、既存の物価指数が問題をはらむことを指摘し、その解決策を提示した。本論文は、昨年度より継続中の研究であるが、実証分析を追加して本研究の提案する新しい解決策の評価も行うなどの拡張を行った。それに加えて、動学的物価指数との違いについても概念整理を行っている。本研究は、マクロ経済学に関する国際的査読誌であるMacroeconomic Dynamicsにアクセプトされた。 これに加えて、供給ネットワーク構造を明示的に考慮したモデルを構築し、望ましいインフレ率を検討した。この研究のポイントの一つは、供給ネットワーク構造が、望ましいインフレ率の水準に対して重要となる場合、ならない場合の整理を行った点である。本年度は、これまでの研究の成果を取りまとめる形で、論文執筆を行い、9月にワーキングペーパーとして対外公表した(DOI: 10.2139/ssrn.4231859)。 また、昨年度から継続中の、供給ネットワークの下での投資特殊的技術進歩に関する研究も、本年度は論文執筆にこぎつけることができ、10月にワーキングペーパーとして対外公表した(DOI:10.2139/ssrn.4238283)。本研究の含意は、供給ネットワークによって企業やセクターが密接に結びついている場合、投資特殊的な技術進歩は本源的なショックとはなりえないため、景気循環の要因分解を行うときには留意が必要という点にある。 本年には、昨年度からの継続案件に加えて、新たな派生研究として、需要側要因による実質値の硬直性を再検討する研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、国際的査読誌に論文が掲載されたほか、昨年度からの継続案件2本を論文化することができた。それに加えて、1本の派生研究にも取り組んだ。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、継続中の案件を進めて国際的査読誌への投稿を展望する。また、派生研究についても、他の研究者からのコメントを受けて発展・拡張することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍の影響もあり、当初研究計画策定時に予定していた出張などを後ずれさせる代わりに、分析計画を前倒して進捗させた。その結果として後ずれさせた資金を、翌年度に利用する予定である。
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