研究課題/領域番号 |
21K01404
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
山田 知明 明治大学, 商学部, 専任教授 (00440206)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 動学的一般均衡理論 / 経済格差 / 少子高齢化 / 社会保障制度 / 税制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、少子高齢化が進む日本において税・社会保障制度改革のあり方を定量的マクロ経済モデルに基づいて分析することにある。これまでも世代重複モデルを用いて税・社会保障制度改革を分析した研究は数多くなされてきた。それらの多くの先行研究との差異は、いかにして"より現実的な要素"を取り込むかにかかっている。多くの世代重複モデルでは「抽象的な経済主体」が消費・貯蓄及び労働供給に関する意思決定を行うと仮定してきた。しかし、現実的には単身世帯とそれ以外の世帯では消費・貯蓄額は大きく異ると考えられる。結婚や出産を意識している若年世代の労働供給や消費・貯蓄行動に関する分析は少子高齢化対策に直結する。一方で、既婚世帯も子供の有無やその年齢によって教育支出などが大きく異なってくる。これらのファクトは家族の経済学(Family Economics)などの分野で積み上げられてきているが、その成果をマクロ経済モデルに取り込む作業をしている途中である。また、高齢者の消費・貯蓄・労働供給に関する意思決定も同様に精緻にモデル化を行う必要がある。例えば、高齢者は高額な医療費支出リスクや介護リスクを抱えており、可能性が低いながらも多額の支出をせざるを得ない状況を想定しながら貯蓄を切り崩しながら生活をしている。このようなリスクに直面した個人の意思決定を数値計算を用いて解くためには特別な数値計算手法の開発が必要になる。 2022年度はファクトの整理を中心に研究を行った。具体的には、(1)家計調査及び全国消費実態調査に基づいて日本の家計を年齢階層及び各種世帯属性に分類分けをした上で、所得・消費・貯蓄(金融資産及び実物資産)の把握を行った。加えて、(2)標準的な世代重複モデルがどの程度、国民経済計算と整合性を持っているのかについて定量的な把握を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で挙げた(1)については、"Dimensions of Inequality in Japan"という形で、日本の経済格差の実証研究の一環として、その成果の一部を公表すべく取りまとめ作業を行っている。具体的には、東京大学の北尾早霧教授との共著で書籍としてSpringer社より公刊予定である(出版については契約済み)。データとしては総務省統計局が集計している全国消費実態調査と家計調査を用いており、これから新たに2019年度に実施された全国家計構造調査の結果を追加することを予定している。研究成果の一部は、2022年度に国際学会で発表予定である。(2)については、アリゾナ大学・東京大学の市村英彦教授との共同研究の形で進めており、研究成果の一部は2021年6月に海外学会にて報告を行っている。分析結果を完結にまとめると以下のようになる。従来の世代重複モデルは選好パラメータや生産構造のパラメータ、各種税制等を精緻にモデル化することである程度、日本の財政状況を再現できている。しかし、経済主体の年齢ごとの消費については当てはまりがそれほど良くない。これは、そもそもモデルにおける経済主体が単身なのか、2人以上の世帯なのか、世帯の形態はどのようになっているのかといった状況を抽象化している事が原因の一つである。そのため、マクロ経済モデルにおいても家族構造をより明示的にモデル化する必要があることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、(1)については書籍化のためにデータを取りまとめている段階にある。すでに個票データの利用再申請は行っており、手元にデータが届き次第、データ分析を再開する。特に、全国家計構造調査の使用は今回が初めてとなるため、データの読み込み作業(StataやPython、Juliaを用いてデータを解析できる状態にする)やその性質の把握に時間がかかると想定される。そのため、今年度はデータを"触りながら"、統計表を作成して、本を執筆する作業が中心になると考えられる。すでにいくつかの学会で成果の一部を報告予定のため、そのフィードバックを反映する形でまとめる作業に移行する。(2)については、モデル化を始めたばかりであり、Eckstein, Keane and Lifshitz (2019,Econometrica)等を参考にしながら、世代重複モデルに結婚・出産・教育といった要素を導入することを試みる。Eckstein達の研究はアメリカのデータに基づいているが、彼らは推計に用いたデータを公表している事から、まずはアメリカのデータに基づいたモデルを構築した上で、日本経済に移植することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会出張のために計上していた金額がオンライン開催に変更になったため。
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備考 |
すべての研究成果は私のHPにして公開予定である。
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