研究課題/領域番号 |
21K01405
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
中村 友哉 明治学院大学, 経済学部, 教授 (70706928)
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研究分担者 |
雨宮 祐樹 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (70759349)
石原 章史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (80643668)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不確実性下の逐次手番ゲーム / クールノー競争 / シュタッケルベルグ競争 |
研究実績の概要 |
本研究は、不確実性下の逐次手番ゲームを用いて、エージェント間の競争に影響を与える3つの要因(「情報の質」、「プレイヤーの数」、「行動のタイミング」)がリーダーの利益に与える影響を解明することを目的としている。2021年度は上記3つの要因間の影響を分析するために、既存研究を整理して、分析のベースとなるモデルを構築した(中村2021「経済論叢」第195巻 第4号、頁37 - 47.)。2022年度は、そのモデルを利用することで、論点の再整理を行なった。 特に、リーダーとフォロワーがともに複数存在する場合に、標準的な数量競争モデルで解析的に分析が可能な範囲を明確にする作業を行なった。その結果、正規分布を想定した情報構造の下でベイズルールに従った情報のアップデートを行うと、戦略的要素が複雑に作用することがわかった。そのため、標準的な数量競争モデルであっても、複数リーダーのケースでさえ解析的分析が難しいことがわかった。 そこで、当プロジェクトでは、標準的な数量競争を分析する場合は、単一リーダーのケースに限定して進める方針を固めた。その一方で、標準的な数量競争モデル以外のの利得関数でも同様に難しいかどうかは必ずしも明らかではない。したがって、その他の戦略的状況においても同様に分析が困難であるか分析する必要がある。そこで、2022年度からは、ケインズ型美人投票ゲームのようなコーディネーションゲームの枠組みで、複数リーダーの状況を解析的に分析可能かどうか、検証を始めた。その過程で得た知見の一部は、東京経済大学の応用ミクロ経済学セミナーで報告を行い、貴重なフィードバックを得た。2023年度はこれらの問題に取り組み、当研究プロジェクトを進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、複数リーダーと複数フォロワーのモデルにおいて解析的に分析可能なクラスを再検証した。標準的な数量競争モデルでは複数リーダーモデルでは、何らかの仕組みを導入しない限り解析的な分析が難しいことがわかった。そこで、標準的な数量競争モデルでの分析では、単一リーダーのクラスに限定して分析する方針を確認した。その一方で、他の利得関数のクラスでも複数リーダーモデルによる分析が難しいかどうかはまだ明らかではない。2022年度は、ケインズ型美人投票ゲーム等、標準的な数量競争以外の利得関数の検証に取り掛かった。しかし、当プロジェクトのメンバーが集まってミーティングを行う機会が限定され、十分に検証を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、単一リーダー複数フォロワーの標準的数量競争モデルでの分析を継続するとともに、ケインズ型美人投票ゲーム等の他の利得関数での分析を計画している。また、先行者の行動から生成される公共情報は、戦略的状況におけて過剰協調問題を引き起こすことが先行研究でも示されている。シュッタケルベルグ競争の構造を導入した美人投票ゲームへ応用することで、バブルや金融危機の分析も試みる。2023年度は新型コロナウイルス感染症の5類引き下げられたので、対面でのミーティングを行なってプロジェクトを進展させる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響によって、対面でのミーティングを計画的に実施することができなかった。そのため、東京高知間の旅費の失効できなかった。
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