研究課題/領域番号 |
21K01408
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
小佐野 広 甲南大学, 経済学部, 特任教授 (90152462)
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研究分担者 |
池田 晃彦 京都産業大学, 経済学部, 助教 (20825799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プルーデンス政策 / 情報投資 / 金融危機 / 市場凍結 / 流動性 |
研究実績の概要 |
金融市場で取引を行う市場参加者の一部が自分で情報投資を行うモデルについて、理論的なモデルを構築した。そのうえで、社会的に最適なレベルと比較して各種のプルーデンス政策が金融市場で過剰もしくは過少な情報投資のどちらをもたらすのか、また、そのことは金融危機の可能性を高めるのかということを、まず理論的なパラメーターを特定化せず一般的な形式で分析した。ここで、各種のプルーデンス政策というのは、バーゼルIII合意で導入された金融機関に対する資本規制及び流動性の規制、並びに、リーマンショックや最近のコロナショックの際に欧米各国で導入された資産の売り手や買い手に対する資産取引の補助金プログラムである。また、ピグー的な情報技術投資に対する直接的な課税および補助金政策の効果も研究した。この定性的な分析では、ある種の条件の下では、バーゼルIII合意で導入された金融機関に対する資本規制及び流動性の規制やピグー的な情報技術投資に対する直接的な課税および補助金政策の効果を明らかにすることができ。たとえば、資本規制の強化は、情報技術への過剰投資を減少させるが、市場凍結の可能性を社会的公正を最大化するレベルより引き上げてしまうというような結果を示すことができた。しかし、リーマンショックや最近のコロナショックの際に欧米各国で導入された資産の売り手や買い手に対する資産取引の補助金プログラムの効果を明確にすることができなかった。そこで、パラメーターの値を現実的に近いような値で数値化して数値計算を行ったところ、資産の買い手に対する資産取引の補助金プログラム以外のすべての政策で予想に近い結果を導出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ある程度まで、定性的な分析である程度まで理論的結果を導出している一方、数量的な分析ではかなりの程度まで理論的推測と近い数値計算結果を導出している。
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今後の研究の推進方策 |
金融市場で裁定取引をするエージェントを一人に特定化しているので、多数のエージェントがいる状況に分析を拡張する。また、資産運用の委託を受けた運用者が情報投資を行うモデルへの拡張も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナにより、予定していた国内外の出張が不可能になり、次年度以降の計画に変更したため。
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