研究課題/領域番号 |
21K01410
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古谷 豊 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (00374885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ガーデン / リンネ / ロイヤル・ソサエティ / トマス・リード / スコットランド啓蒙 |
研究実績の概要 |
ステュアートの『経済学原理』ダブリン版(1770年刊)がアメリカ植民地、とくにサウスカロライナに受容された事情について、1.サイエンスコミュニティ、2.スコットランドコミュニティ、3.ミリタリーコミュニティの角度から調査を進めた。 サイエンスコミュニティの方面では、サウスカロライナのチャールストンで活躍した植物学者アレクサンダー・ガーデンがもっとも重要な鍵であるように思われる。彼はカール・フォン・リンネの協力者で、リンネ『自然の体系』の後の版にはガーデンがアメリカから報告・送付した動物種が複数含まれている。ガーデンは『経済学原理』ダブリン版を予約購入している。当時の南部アメリカ植民地のサイエンスコミュニティが小さかったことや、南部ではチャールストンが出版や文化の拠点であったことをふまえれば、ガーデンは『原理』の受容状況を示す代表的な例であるということができる。 その調査を進めるなかで浮かび上がってきたのが、チャールストン及びガーデンの、ブリテンとの知的交流のつながりの太さであった。本研究ではこのつながりはさらに三系統に分けて把握することが適当であろうととらえている。第一は王立学会をはじめとするブリテンの各種学術団体とのつながりである。ガーデン自身も王立学会その他多くの団体のメンバーで、1783年にはエディンバラ王立学会のメンバーにも選ばれている。第二の系統は子弟の高等教育のつながりで、チャールストンの富裕層の多くはその子弟をブリテンに送って高等教育をうけさせていた。ガーデンの息子もグラスゴー大学で学位を取得している。第三の系統は個人的ベースのつながりで、ガーデンの場合に注目されるのはトマス・リード(スコットランド啓蒙の主要メンバーの一人)と親しかったことである。 チャールストンの知的グループとスコットランド啓蒙グループとの距離は、実はそれほど離れていなかったのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で国内出張も海外出張もすることはできなかったが、海外のデータベースや図書など可能な工夫をこらして研究を進めていった。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の計画に沿って進める。 ただし新型コロナの国内・国外での状況をふまえつつ、海外渡航を伴う要素については適宜情勢に合わせて調整していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大にともない出張が制限されるなど、研究を進める手順を入れ替えることになった。2022年度以降、感染状況をにらみながら先送された研究部分を行っていくことになる。
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