1920年代末から1930年代にかけて展開された「日本資本主義論争」と「中国社会性質論争」「中国社会史論争」は、いずれも国名が冠せられていることもあり、これまでもっぱら一国的な枠組みから分析がなされてきた。これに対し、本研究は初期社会主義運動における人的ネットワークなどをもとに、日中両国の「資本主義論争」にみられた相互連関性の具体的な実相を明らかにした。こうした日本と中国の「資本主義論争」は、両国にまたがって起きた一連の思想運動にほかならない。従来の一国史観をのりこえ、トランスナショナルな新しい東アジアの思想史(intellectual history)像を提示した。
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