研究課題/領域番号 |
21K01413
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
森 直人 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (20467856)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒューム / スコットランド啓蒙 / イングランド史 / 商業 / 主権 / 党派 / 宗教 / 文明 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、思想家D.ヒュームの社会哲学・歴史叙述を「商業と主権の連環」という着眼によって総合的に解釈し、その認識の思想史的な背景と意義を探究することにある。2023年度は、まず昨年度予定していた次の2点の課題に取り組む計画だった。すなわち、(1)ヒューム『道徳・政治・文学論集』の(特に日本における)受容を検討、学会発表を行い論考にまとめる。(2)彼の党派論と宗教論に関して検討を重ね、同時代のキリスト教道徳をめぐる議論についても考察し、学会発表を行う。また2023年度は当初計画の最終年度にあたるため、上に加えて(3)商業と主権の連環をめぐるヒュームの思考と共和主義的言説との対比、(4)この思考とその思想史的な意義についての総括を行う計画だった。 しかし昨年度に続き、「現在までの進捗状況」に記載の理由から研究時間の確保が困難となり、(1)(2)について学会発表等には至らず、(3)(4)は着手することもできなかった。(1)に関しては、昨年度から引き続き関連資料の収集と読解に当たり、特に日本の側の受容のコンテクストをどう把握するかに関して重要な着眼を得ることができたが、これを学会発表まで取りまとめるには至らなかった。(2)については、18世紀英国に関する宗教と党派の重要性、さらに長期的に見た場合の近世ヨーロッパにおける宗教と政治の連関について関連資料の読解を進め、こちらも一定の把握の枠組みを得たものの、未だ発表には至っていない。これらの課題については研究期間を延長して2024年度に持ち越すこととなった。 なお、以上に述べた作業の所期の成果ではないものの、その副産物として、思想史研究におけるコンテクスト理解、特に西洋思想の日本における受容のコンテクストに関して方法論的検討を行い、学生を主たる読者と想定する出版物に一章を寄稿したので、研究発表欄に記載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来であれば、2023年度までに上の4点の課題を可能な限り進めて、本研究は実施を終える予定であった。しかしながら、2022年度に生じた所属機関内外での各種業務負担の大幅な増大は2023年度においても継続し、一部の業務についてはさらに負荷が増すこととなった。そのため、4点の課題いずれについても、当初の計画、及び2023年度初頭に再設定した計画から遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
所属機関内外の業務負担の増加は2024年度においても継続し、一部でさらに増大する見通しである。その中で、可能な限り当初の計画に近い成果を挙げるために、以下の方策を取りたい。上記の研究課題の(1)に関しては、研究期間中にまとまった内容を報告することを断念して今後長期的な課題として取り組みたい。この課題についてすでに得られた着眼については、課題(4)を進める中で、その検討と議論の一部として組み込むこととしたい。また研究課題(3)に関しても、研究期間中の検討をいったん断念して、今後の課題としたい。課題(2)については、引き続き検討を進めて何らかの成果公表を目指す。また、当初の計画からは縮小した形となるが、課題(4)に即して、ここまでの研究を取りまとめて今後に向けた展望を示す総括的な考察を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」に記載した理由から、2023年度においても調査・研究発表を計画通りに行うことができなかった。そのため(新たに必要となった文献の購入費、意見交換のための国内旅費などで一部執行した経費を除く)残額については、研究期間を延長した上で、2024年度に繰り越すこととした。 今後の使用計画は以下の通りである。当初英国での資料調査・意見交換と、国際学会での報告のために計上していた海外旅費については、前者の目的に絞って実施可能かどうか模索したい。英文での成果発表のための英文校正費用についても、現状に鑑みて可能性は高いとは言えないが、課題(2)ないし(4)についての検討を英語で取りまとめることができれば執行することとしたい。国内旅費は、国内学会での発表及び最新の知見収集のため活用することとする。なお、(2)(4)取りまとめのために必要な資料が見出された場合は一部費目を変更して文献購入に支出する。これらが十分進捗せずに残額が生じた場合には、返還することとしたい。
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