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2022 年度 実施状況報告書

リカード貿易論の現代的意義

研究課題

研究課題/領域番号 21K01417
研究機関同志社大学

研究代表者

服部 茂幸  同志社大学, 商学部, 教授 (60258192)

研究分担者 塩澤 由典  大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 名誉教授 (00109076)
岡 敏弘  京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (00231209)
田淵 太一  同志社大学, 商学部, 教授 (50242136)
平野 嘉孝  富山県立大学, 工学部, 教授 (80305482)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードリカード貿易理論 / 国際価値論 / グローバル・バリュー・チェーン / スラッファ
研究実績の概要

2022年7月17日に開催した国際価値論研究会では、塩沢が「国際価値論における経路依存の考え方」を報告した。そこでは、国際貿易下でも国の数だけ異なった労働があるから、技術だけでは価値が決まらない。需要が重要ということは新古典派的になる。粗手に対して、1)認容な国際価値は膨大な数ある、2)面や稜の上では価格による数量調整はない、3)認容な国際価値の集合に対応する生産可能集合が凸である保証はない、4)現実の生産は極大面で行われているとは限らない、5)ある国際価値が成立している時、他の価値に切り替わる理由がないといった点に着目することによって、経路依存という見方に道を開いた。こうした方向にそって理論的に研究を進めている。
またスラッファ価格理論の枠組みを利用し存続可能性概念に基づきながら、数量変化と価格変化の分離の分析可能性を明確にすることを目指した。その成果の一つとして、技術進歩の効果に注目し、特に均一利潤率と、不均一な物的成長の両立を示す数値例を取り上げる論文を執筆した。
新国際価値論を基礎とした、実装分析、学史研究も各自が多様な方向で進めている。
服部は『グローバル金融資本主義の危機』を執筆し、2023年に出版する予定である。それとは別に本を執筆中である。新たな本では新国際価値論に基づき日本の物価変動にとって決定的に重要なのは輸入物価であることを示すと同時に、リフレ派の考える金融政策がインフレ予想を動かし、物価を変動させるという主張には全くエビデンスもないことを明らかにする。
グローバル・バリュー・チェーン研究の成果の1つである付加価値輸出入の概念を、労働とCO2排出に応用し、炭素生産性を労働輸出入とCO2排出輸出入とに関係づける研究を行った。
経済学史に関するところでは、生産費価値説にもとづく国際価値論について、リカードからシーニアへの継承関係を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナのために研究会は思ったほどは開催できなかった。しかし、服部は二冊の本を出版する予定である。その他の研究者も論文や学会発表を重ねている。

今後の研究の推進方策

研究計画書では、3つの柱を立てた。それは、1)リカードから新古典派までの貿易論の再検討(服部、田淵)、2)リカード価格理論の「現代化」とその実証(服部、塩澤、平野)、3)貿易下の失業理論の再構築とその実証(服部、岡、平野)である。この本心に沿って、予定通り研究を進める。最終的に成果は英文で論文、本として出版する予定である。
1)に関しては、今後もシーニアおよびその後の生産費価値説にもとづく国際価値論の系譜を追跡する。2)に関しては、新国際価値論の理論を基礎として、日本の消費者物価を動かすものが輸入物価やコストであって、マネタリーベースやインフレ予想ではないことを明らかにする。1)と2)に関連するとことでは、スラッファ体系とノイマン体系との関係を検討をさらに続ける。3)に関しては、有効需要概念はどのように扱いうるかについても、時代遅れの機械の取り扱い、ケネーの経済表の分析含意、セー法則の検討、などを通して取り組む。

次年度使用額が生じた理由

2022年度もコロナウイルスの余波があり、計画していたほど旅費に研究費が使えなかったため。今後は研究費を従来通り行う。あまった資金は英文の図書、論文のための英文チェックにも支出する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (9件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] 研究動向・2000年代以降の国内外のリカードウ研究2023

    • 著者名/発表者名
      竹永進・田淵太一・若松直幸
    • 雑誌名

      経済学史研究

      巻: 64 ページ: 45~67

  • [雑誌論文] スラッファ文書と存続可能性概念2023

    • 著者名/発表者名
      平野 嘉孝
    • 雑誌名

      富山県立大学紀要

      巻: 33 ページ: 39~43

  • [雑誌論文] ピエロ スラッファ2023

    • 著者名/発表者名
      平野 嘉孝
    • 雑誌名

      経済学史研究

      巻: 65 ページ: 81~83

  • [雑誌論文] 黒田日銀はなぜデフレ脱却に失敗したのか2022

    • 著者名/発表者名
      服部 茂幸
    • 雑誌名

      同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review)

      巻: 74 ページ: 637~677

    • DOI

      10.14988/00029328

  • [雑誌論文] 「長期停滞と混迷する経済2022

    • 著者名/発表者名
      服部 茂幸
    • 雑誌名

      世界

      巻: 965 ページ: 116~123

  • [雑誌論文] 長期停滞と行き詰まる金融政策2022

    • 著者名/発表者名
      服部 茂幸
    • 雑誌名

      月刊 自治研

      巻: 761 ページ: 42~50

  • [雑誌論文] N. シーニアの貨幣論と国際価値論2022

    • 著者名/発表者名
      田淵 太一
    • 雑誌名

      高崎経済大学論集

      巻: 64 ページ: 45-57

  • [雑誌論文] International Trade2022

    • 著者名/発表者名
      Taichi Tabuchi and Taro Hisamatsu
    • 雑誌名

      Routledge Historical Resources (History of Economic Thought)

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.4324/9781138201521-HET24-1

  • [雑誌論文] 「4つの数字」の魔力 : リカード貿易理論の新展開2022

    • 著者名/発表者名
      田淵 太一
    • 雑誌名

      同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review)

      巻: 74 ページ: 299~327

    • DOI

      10.14988/00029300

  • [学会発表] The Global Financial Crisis and Friedman's Theory of the Great Depression2022

    • 著者名/発表者名
      服部 茂幸
    • 学会等名
      International Conference on Economic Theory and Policy
  • [学会発表] 黒田日銀の10年間を回顧する2022

    • 著者名/発表者名
      服部 茂幸
    • 学会等名
      進化経済学会
  • [学会発表] 経済学の基礎を問う2022

    • 著者名/発表者名
      塩沢 由典
    • 学会等名
      進化経済学会シンポジウム
  • [学会発表] Post Keynesian price theory in view of globa value chains2022

    • 著者名/発表者名
      塩沢 由典
    • 学会等名
      International Conference on Economic Theory and Policy
  • [学会発表] 価格から数量へ、均衡から過程へ2022

    • 著者名/発表者名
      塩沢 由典
    • 学会等名
      西浦廉政先生古希記念研究会
  • [学会発表] Microfoundations でできたこと、期待されること2022

    • 著者名/発表者名
      塩沢 由典
    • 学会等名
      進化経済学会
  • [学会発表] 進化経済学のミクロ的基礎2022

    • 著者名/発表者名
      塩沢 由典
    • 学会等名
      進化経済学会

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公開日: 2023-12-25  

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