研究課題/領域番号 |
21K01421
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 弦矢 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00725103)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 時空間モデル / 混合モデル / 所得分布 / ベイズ統計 |
研究実績の概要 |
2021年度は,所得のグループデータから日本全国の市区町村の所得分布の推定・予測をするために,柔軟な時空間混合モデルを考案し,モデルの推定方法の開発と実データへの適用を行った.ここで扱うグループデータは,各世帯の所得は観測されておらず,各市区町村において予め設定された各所得階級に属する世帯数のみが複数年度に渡って観測されているものとする.各時点・市区町村における所得分布を柔軟にモデリングするために,潜在的な家計所得が対数正規分布の混合モデルによってモデリングを行い,時空間効果をその混合割合に導入した.これにより,柔軟性を保ちつつ,パラメータや潜在変数の数を比較的少なくすることが可能となる.さらに,混合モデルにおいて必要なコンポネント数を決定する方法も既存の混合モデルにおける方法に従って検討した.提案するモデルに対し,Polya-Gammaデータ拡大に基づくマルコフ連鎖モンテカルロ法を開発した.数値実験を行ったところ,時空間効果を含む提案モデルは,独立な二元ランダム効果モデルや独立な空間モデルよりも推定精度において優れていることがわかった.日本の実データへ適用し,既存モデルでは不可能であった,各市区町村の所得分布の将来予測を行えるということのデモンストレーションを行った.ここまでの研究結果は,国際学会XV World Conference of the Spatial Econometrics Associationなどで報告を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルの開発,推定アルゴリズムの開発および実装まで比較的順調に進んだ.一方で,実データへの応用に関しては,データのサイズが大きいため,推論の実行にかなり長い時間がかかってしまっている.2022年度前半には論文をまとめて国際査読誌へ投稿する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に行った上記の時空間モデルに関しては,2022年度前半には論文をまとめて国際査読誌へ投稿する予定である.一方で以前行った,ディリクレ分布に基づくロレンツ曲線に対する統計モデリングのさらなる拡張,改善を行っていく予定である.これについては,損失関数に基づくM推定と状態空間モデルを組み合わせるアプローチや,ロレンツ曲線をセミパラメトリックにモデリングするアプローチなどを検討する予定である.
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