研究課題
バブルや感染爆発といった非エルゴード的な状態を有する確率過程が観測されるときの逐次解析について考察を行う。非エルゴード的確率過程とは,観測されるフィッシャー情報量の極限にランダムネスが残る過程のことである.具体的な例は,1を超える自己回帰係数を有する自己回帰過程,1を超える基本再生産数を有する分枝過程である.本研究では、誤差項が条件付不均一分散を有する一階の自己回帰過程として分枝過程が認識されることに着目し、一般化最小二乗法を用いた逐次解析の手法を解明する。その際、分枝過程の基本再生産数は自己回帰係数となり、そこに1に近い局所対立仮説を仮定すると、分枝過程はCox-Ingersoll-Ross(CIR)過程と呼ばれる拡散過程に収束する。その近似は通常の一階の自己回帰過程が1に近い局所自己回帰係数を有するとき、Ornstein-Uhlenbeck(OU)過程に収束することに相当する。CIR過程およびOU過程の尤度比過程における十分統計量は、ドリフトを持つ二乗Bessel過程であらわされる。本研究では一般的な連続時間の二乗Bessel過程に対し、観測フィッシャー情報量に基づく停止時刻を考える。その理論の基礎として、①.ドリフトの逐次最尤推定量が時間変更されたブラウン運動で表されること、②.停止時刻における観測フィッシャー情報の変化割合(微分)がベッセル過程であらわされること、③.停止時刻がそのベッセル過程の逆数の積分であらわされること、④.逐次最尤推定量と停止時刻の結合密度が求められること、⑤.④で求めた停止時刻が0に近いところでは大きく振動してしまうという欠点を補う結合ラプラス変換が求められること、⑥.逐次t検定が一様最強力不変検定となること、の6点が求められた。
1: 当初の計画以上に進展している
OU過程およびCIR過程の尤度比過程において、十分統計量がドリフト付き二乗ベッセル過程であらわされることを発見し、一般論としてドリフト付きベッセル過程のドリフトに関する逐次検定の理論を解明すればよいという認識を新たに得た。そして、ドリフトの逐次最尤推定量が時間変更されたブラウン運動で表されること、停止時刻での観測フィッシャー情報の変化割合(微分)が時間変更されたブラウン運動で駆動されるドリフト付きベッセル過程であらわされること、という認識をあらたに得た。それにより、自己回帰過程と分枝過程の非エルゴード的問題が完全に統一した形で解明された。また、局所仮説に基づく逐次解析の不変性の問題を新たに考察し、局所対立仮説を有する自己回帰過程と分枝過程の逐次t統計量が一様最強力不変検定であることを導いた。
OU過程およびCIR過程の変化点探索の問題は極めて重要であると考えられるので、それをドリフト付き二乗ベッセル過程の変化点探索として解明したい。非逐次的問題として分枝過程の基本再生産数が1を超えるかどうかの検定(臨界性検定)を解明したい。ドリフト付きベッセル過程の初期値の問題を解明し、バブルの検出や感染爆発の問題に適用したい。次数pの自己回帰過程に相当する次数pの分枝過程について非逐次・逐次の検定について考察したい。移民項のある場合は上に述べたCIR過程を極限に持つが、移民項のない場合は次元0の2乗ベッセル過程に相当するCIR過程に収束する。移民項のない場合には、移民項のある場合には現れない絶滅という事象が生起するが、絶滅時刻や絶滅確率などをさまざまな子孫分布について考察したい。
コロナ感染の影響で支出計画に狂いが生じた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Advances in Econometrics
巻: Accepted ページ: forthcoming
Discussion Paper Series, CEGS, Yokohama National University
巻: 2020-CEGS-05 ページ: 1-14