研究課題/領域番号 |
21K01431
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
刈屋 武昭 名古屋商科大学, マネジメント研究科, 教授 (70092624)
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研究分担者 |
林 高樹 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (80420826)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 伝統的OLS枠組み / 重共線性問題 / 分散拡大ファクタ / 検出力縮小ファクタ / t検定 / 回帰モデル選択 / 実証的に有効なモデル / yアコモデーティングモデルX |
研究実績の概要 |
「係数推定値の安定性と、仮説検定基準に基づく、変数・モデル選択の効果を毀損する」という伝統的な困難な問題に関わり、実証分析の視点から有効な回帰モデル構築法を確立する目的から、論文では、まず第一に、実証分析モデルのためのモデル選択プロセスと、標本理論とを結合する概念的な枠組みを定式化。そこでは、データ(y,X)を所与としたとき、実証分析モデルとしての有効性、信頼性、モデル選択上での整合性を確保するために、分散拡大要素(VIF)をもつ各最小2乗推定量の個別標本分散と、各係数のt‐検定の個別検出力を制御して、新概念”y-accommodating model X”を求めるモデル選択法を構築・提案。 第二に、重共線性がt検定の検出力への影響を研究する解析的な枠組みを展開。そこでは、個別係数のt‐値を制御するため、回帰モデル全体を各係数ごとの個別モデルの集合として表現し、それによって重共線性は、検出力を一様に小さくする(検出力デフレーションファクタ(PDF))ことを示した。したがって、重共線性が強いと、個別t検定は有効でなく、多くの実証分析で行われている個別変数選択法は、有効でないことを示した。また、その重共線性制御問題は、推定問題でのそのコントロールに帰着できることを示した。さらに、重共線性に関係なく、これまでのt値をその大きさの順に並べて、小さい方から変数を選択する段階的なモデル選択法は、有効でないことを示した。実際、そこでは、t統計量の間の相関はゼロにならないことを示し、2つのt統計量の平均値の同等性仮説の一様最強力不変検定を導出して t統計量の差が有意とならない場合、t値の大きさで変数選択をする方法に意味のないことを示した。 第三に、重共線性をコントロールする、独自アルゴリズムを提案している。これは、推定値並びにt値の有効性、信頼性を確保する視点に基づいている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的基礎の研究は、時間がかかったものの、5月初めに完成論文として仕上がった(35ページ)。一方、今年度の実証分析研究のアウトプットの準備としては、本論文の方向に沿った重共線性をコントロールするアルゴリズムの簡易版は、昨年度エクセルマクロでソフトを外部支援者により開発してあり、さらに、7セットのデータに対して計算してある。しかし、その具体的な内容に入って、理論との関係をチェックしてないので、9月までにそれを行うと同時に、理論をさらに発展させることに努める。今年度の予定は理論的な拡張と、実証分析の論文を書くことを目的とする。 一方、申請時の予定に記述した本格的なアルゴリズム・ソフトの開発は、大きな変更はないものの、共同研究者の重共線性コントロール・アルゴリズム開発は6か月程度遅れている。これも今年度の研究対象である。
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今後の研究の推進方策 |
理論的な基礎の論文は、5月に国際的ジャーナルに投稿する予定。9月に、日本統計学会で報告する予定。さらに理論を進化させる論文を書く。 一方、共同研究者のコンピュータ・アルゴリズム開発は、半年ほど遅れているが、今年の9月までに構築予定。 すでに計算結果が出ている7つのデータに対して、問題ごとに我々の視点に立った、分析をさらに進める。また、理論の方向に沿った有名なデータによる実証分析を行うこと、実験計画法モデル等に特化した場合の理論の展開を行うこと。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度3月に書籍購入として残額32,113円を使用する予定でしたが、3月中に海外からの入荷が分からなかったので、見合わせ4月以降使用することにした。
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