研究実績の概要 |
補助事業期間の二年目(令和四年度)は、第一に、令和三年度に取り組んだ「取引先工場の人流データを用いた製造業企業の活動量予測」が進捗したことを踏まえて、加藤ほか(2023)として取りまとめた。第二に、令和三年度に取りまとめたArata & Miyakawa (2021)の基礎技術である「取引レベルのアウトカム予測を行う機械学習モデル」について特許出願を行った。なお、当該特許出願については、令和五年四月に特許査定を受けている。Arata & Miyakawa (2021)及び令和三年度に取りまとめたArata & Miyakawa (2022)は英文査読付きジャーナルへ投稿中である。第三に、当初検討していたRCTベースの因果推論に関する代替策として2022年度作成の実施状況報告書に記載した「機械予測と人による裁量的な予測との間における予測精度の差異に係る研究」について証券投資の文脈で実施し、宮川ほか(2023)として取りまとめた。 加藤、宮川、柳岡、雪本(2023)「滞在人口データを用いた取引先企業のリース需要予測」, working paper. 宮川、早川、加藤、古谷野、仲山(2023)「市場運用業務における人間と機械のタスク分配」日本証券業協会 Arata and Miyakawa (2021) “An Empirical Analysis for the Micro Origin of Aggregate Fluctuations,” RIETI Discussion Paper Series 21-E- 066. Arata and Miyakawa (2022) “Demand Shock Propagation through an Input-Output Network in Japan,” RIETI Discussion Paper Series 22-E-027.
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間三年目(令和五年度)については、第一に、既に学術研究としての取りまとめ済みの学術論文について学会報告、英文査読付きジャーナルへの投稿を進めることで、研究成果の公表に向けた取り組みに注力する。特に、学術研究としての価値に加えて、本研究課題の重要な特徴である企業及び政策実務の高度化への貢献を念頭に置いた広義のアウトリーチ活動にも取り組む。 第二に、機械学習手法を用いた予測と因果推論の文脈で新たな研究プロジェクトを実施する。具体的には、コーポレートガバナンスに係る高次元の変数を用いた株価の予測モデルの構築に取り組むほか、共同研究先である大手金融機関から提供を受ける予定の「企業間送金データ」を用いて高頻度で計測されたサプライチェーンネットワークデータを構築した上で、新しい技術を用いた取引関係の予測モデルを構築する。 第三に、これらの取り組みと並行して、企業を対象とした高精度の予測結果をRCTの形式で企業実務へ投入した際の影響を計測する取り組みにチャレンジする。既述の通り、本研究課題の目的が予測と因果推論を融合した実証分析を行うという点にあることを踏まえて、研究代表者自身の過去の取り組みであるMiyakawa & Shintani (2020)や宮川ほか(2023)のほか、共同研究先であるリース会社との間で進めている同種の取り組みを通じて研究課題の推進を図ることも検討したい。 宮川、早川、加藤、古谷野、仲山(2023)「市場運用業務における人間と機械のタスク分配」日本証券業協会 Miyakawa, D. and K. Shintani (2020), “Disagreement between Human and Machine Predictions”, IMES Discussion Paper Series 2020-E-11, Bank of Japan.
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