研究課題/領域番号 |
21K01453
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
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研究分担者 |
山本 和博 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10362633)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国際貿易 / 中小企業 / 多国籍企業 / 貿易の自由化 |
研究実績の概要 |
大企業と中小企業とが共存している国際経済を分析し、共存することによる効果を理解するため、二段階に分けて分析を行った。ここでは、大企業とは自分の行動が他企業に与える影響を考慮した上で自分の行動を決定する企業で、小企業とは自分の行動が他社に与える影響は無視できるほど小さいと思っている企業であるとしている。第一段階では、大企業のみが存在している多国モデルを構築した。ここでは、各国に1社の大企業が立地していると仮定している。大企業は、外国に財を輸出する際に、貿易費用を追加的に支払って、外国市場の製品を輸出できると仮定している。このモデルの分析の結果、国際的な貿易費用が減少することにより、各国の大企業が輸出を増やすことによって、大企業の国内に占める市場シェアが小さくなり価格を低下させることが分かった。そして、貿易費用の減少は経済厚生を常に上昇させることが分かった。第二段階では、大企業と小企業とが混在する多国モデルを構築し、貿易費用の減少が与える影響について分析を行った。ここでは、小企業は自国内にしか生産物を供給できないが、大企業は全世界にその生産量を供給できると仮定している。その結果、貿易費用の減少は各国の大企業の輸出を増やし、大企業の財価格を低下させ、小企業の数を減らし、経済厚生を常に上昇させることが分かった。しかし、大企業の国内シェアが拡大するか縮小するかどうかはあいまいであることがわかった。大企業の国内シェアに関する影響があいまいである理由は、小企業の数が減ることで国内シェアが増える効果と外国製品が流入する結果大企業の国内シェアが減少してしまう効果のどちらが大きいか明確でないからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大企業と小企業が混在するモデルを構築し分析した結果、どの効果が大企業と小企業とが混在することが得られる新しい効果なのかわからないことが分かった。そこで、大企業のみが存在するモデルを構築することで、大企業と小企業が混在することの効果を抽出できると考えた。この新たな追加的な分析が大企業と小企業が混在する経済への理解を容易にした。また、国際経済学者との議論によって、大企業の国内シェアに注目するとよいというアドバイスを受け、大企業や小企業の国内シェアの分析を加えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
小企業の数が減ることで国内シェアが増える効果と外国製品が流入する結果大企業の国内シェアが減少してしまう効果のどちらが大きいについて、理論的にさらに分析をする必要がある。そして、どのようなときにプラスの効果がマイナスの効果を上回るのかを説明する。また、2023年度に行った二つの分析を比較することで、大企業と小企業が混在することによる影響を際立たせる研究を行う。2024年度は、2023年度の研究成果を国内外の学会で報告し、研究成果を世間に広めるとともに研究成果をよりよりよい形でまとめる。また、研究会では国内外の研究者と積極的に議論を行って論文の質を高めていき、海外査読付き雑誌に投稿する。このモデルを用いて、各国政府が大企業を自国に誘致するための政策について考える。そして、各国が自由に経済政策を行っている場合と、最適な状況とを比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末で間に合わなかった旅費の申請を行い、次年度使用額を使用する予定である。
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