研究課題/領域番号 |
21K01462
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村尾 徹士 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (00645004)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 空間動学モデル / 数値解析 |
研究実績の概要 |
(今年度の研究内容) 本研究課題の目的は,インフラ整備,規制緩和,R&D投資補助,という3種類のイノベーション政策を念頭に置きつつ,グローバル競争激化と産業構造変化のもとで有効なポリシーミックスを明らかにすることである.この目的を達成する上での困難は,グローバル競争の激化と産業構造変化の影響を適切に捉えたうえでイノベーションを分析するための空間動学モデルは「次元の呪い」が非常に深刻となることである.とりわけ深刻な点は,競争激化の影響を捉えるには各企業が正の市場シェアを持つ状況を前提とせねばならず,従って空間動学一般均衡モデルの分野で一般的に用いられている市場構造である独占的競争を仮定できないことである.本研究ではこの問題に対処するために,Weintraub, Benkard and Van Roy (2008 Econometrica) によって提案された Oblivious Equilibrium という均衡概念に基づいてモデルを構築することにする.空間を考慮しないプレーンな Oblivious Equilibrium モデルでは,各企業は自らの状態と長期平均的な産業状態のみに基づいて意思決定を行う.Oblivious Equilibrium モデルの最大の利点は,マルコフ完全均衡に比べて遥かに少ない計算量によって均衡を求めることができることにある.本年度は,Oblivious Equilibrium モデルを空間動学フレームワークに拡張することにより,グローバル競争の激化,産業構造変化,およびイノベーションを分析可能なフレームワークの構築に着手した. (意義・重要性) 空間とイノベーションを明示的に考慮した動学的一般均衡モデルの研究は「次元の呪い」が非常に深刻であるため十分な研究が進んでおらず,その点において一定の意義が存在すると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Oblivious Equilibrium の概念を採用することで空間動学モデルに関する「次元の呪い」に対処するという方向で研究を進展させることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
オリジナルの Weintraub, Benkard and Van Roy のモデルに空間を導入したモデルの数値解析を完了させることが当面の課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
数値解析に用いるワークステーションの購入を予定していたが,2022年度の購入を見送ったため.理由は半導体価格高騰により,数値解析用途のGPUを搭載したワークステーションの価格が高騰したためである.次年度使用額については,次年度請求分の物品費(ワークステーション購入)に含めて使用する.
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