研究課題/領域番号 |
21K01467
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸介 中央大学, 経済学部, 教授 (90363316)
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研究分担者 |
林田 実 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (20198873)
出島 敬久 上智大学, 経済学部, 教授 (70286756)
村田 磨理子 公益財団法人統計情報研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (20443319)
古隅 弘樹 兵庫県立大学, 社会情報科学部, 准教授 (70336824)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公的統計ミクロデータ / 外国人労働者 / ミクロ計量分析 / 雇用創出 / 労働移動 / 政策評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、証拠に基づく政策立案(Evidence Based Policy Making=EBPM)の観点から、わが国における公的統計ミクロデータや行政記録情報を中心とする大規模データを用いて、外国人労働力を考慮した雇用創出と労働移動に関する実証研究を行うことである。令和5年度の研究においては、わが国における世帯類型と世帯主と配偶者の働き方の差を考慮した場合に、所得の構成が家計の消費行動に与える影響に関して実証研究を行った。本研究では、これまでの先行研究を踏まえ、全国家計構造調査の個票データを用いて、家計消費の10大費目およびその詳細費目の支出に関して夫婦の所得の影響を推定した。さらに、恒常所得の影響をより正確に制御するために、賃金構造基本統計調査の個票データも併用しながら,先行研究のモデルに加えて、労働時間に関する情報を有効に活用した上で、世帯類型や就業特性を考慮した消費構造との関係を実証的に明らかにした。 また、本研究においては、賃金構造基本統計調査で近年把握が可能になっている外国人労働者の在留資格に着目し、賃金構造基本統計調査のミクロデータと国籍が捉えられる国勢調査の集計データを用いたデータリンケージを行うことによって、そのデータ特性の検証を行うだけでなく、リンケージされたデータの利用可能性を探究した。このような複数のミクロデータのリンケージを行うことによって、ミクロデータの利用可能性がより高まることを実証的に確認することができた。 なお、本研究の成果については、統計関連学会連合大会(2023年9月に京都大学で開催)や令和5年度研究集会「ミクロデータから見た我が国の社会・経済の実像」(2024年3月に一橋大学で開催)で研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度における当初の研究計画は、主としてわが国の公的統計ミクロデータを対象に、リンケージの有効性の検証も行った上で、リンケージされたミクロデータによる雇用創出と労働移動に関するモデル分析を行うことである。令和5年度では、全国家計構造調査や賃金構造基本統計調査等のミクロデータを用いて、本研究の1つである消費構造の変化を被説明変数とし、雇用創出、労働移動が説明変数となるモデルの構築を行い、個票データの分析を進めることができただけでなく、賃金構造基本統計調査を中心にリンケージでの利用可能性について確認することもできた。しかしながら、公的統計の個票データを用いたリンケージデータに関する実証分析については、十分に研究を進めることはできなかっただけでなく、論文等の取りまとめも十分にはできていない。したがって、現在までの進捗状況は、当初の計画と比べるとやや遅れていると言える。 一方で、令和5年度にミクロデータによるリンケージとリンケージされたデータによる実証分析を進めていることから、令和6年度においては、リンケージデータを対象にしたモデルの構築のための作業をさらに進めると同時に、ミクロモデル分析に関する精密な推定方法の検討も行っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も、様々な公的統計ミクロデータを用いて、外国人を考慮した雇用創出と労働移動に関するミクロモデル分析を行う。そのために、主として公的統計ミクロデータを対象にしたデータリンケージの有効性について引き続き検証を行うだけでなく、リンケージデータを用いて、外国人を考慮した雇用創出と労働移動に関するモデル分析を行う。また、計量分析においては、Difference in differencesを用いた対照群の制御や、propensity score matchingによる内生性を考慮した推定方法の可能性をさらに追究する。本研究の成果については、学会や研究会等で研究成果を報告するだけでなく、論文の形で刊行することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、令和5年度において、消耗品の購入、国内旅費や海外旅費の支出を行ったが、支出予定の研究費から残金が発生した。これに関しては、令和6年度に併せて支出する予定である。 令和6年度における使用計画については、本研究では、消耗品費、国内旅費を中心に研究経費が構成されている。「消耗品費」には、雇用創出と労働移動やミクロモデル分析に関係した図書、さらには統計解析用ソフトウェアやプログラム作成用のソフトウェア等、パソコン周辺機器に関する購入費が含まれている。「旅費」については,統計関連学会連合大会や経済統計学会研究大会等における研究成果発表に伴う旅費を中心に計画している。なお、「その他」の経費は,研究成果に関する論文の印刷費,文献資料のコピーに必要な複写費,関係者に論文を送付するための切手代を含む通信費,学会での研究報告のために必要な学会参加費,およびマッチングの自動化やシミュレーションに関するプログラム作成についての業務委託を含む。
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