研究課題/領域番号 |
21K01468
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
海老名 剛 明治大学, 商学部, 専任准教授 (00579766)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不確実性 / リポジショニング / リアル・オプション |
研究実績の概要 |
研究実施計画において,2021年度の目標は,1.現実に近い確率過程を導入した連続時間動学モデルを構築し,企業が,製品差別化(ポジショニング,立地),および投資時点に関する意思決定を行うモデルを構築することであった.そのうえで,2.状態遷移確率のような,一定の確率で不確実性が高い状態と低い状態をスイッチするようなモデルを構築することを,目標としていた. そこで,1.と関連して,ホテリングによる立地-価格競争モデルに,市場規模が幾何ブラウン運動に従い不確実性を伴う設定を導入し,製品差別化,および参入時点に関する分析を行った.結果として,規模に関するボラティリティ(不確実性)が高まると,リーダーはより差別化した製品を投入することを示した.また,フォロワーの参入時点が,ボラティリティに関して,非単調となることを示した.特に,後者の結果は,リアルオプション理論が通常示唆する結果と大きく異なる点である.本研究成果をまとめた論文が,国際学術雑誌European Journal of Operational Researchに採択された. 2.と関連して,消費者の選好がブラウン運動に従い,かつ,トレンドやボラティリティが複数の状態で遷移するという2種類の不確実性があるモデル(レジーム・スイッチングモデル)を構築した.そして,状態遷移がない状況とある状況とで,企業の再差別化(リポジショニング,再立地)およびその閾値がどのように変化するかについて,考察した.結果として,状態遷移確率が上昇すると,閾値が非単調に変化することがわかった.既に,本研究成果を論文としてまとめ,英文校正によるチェックを受けたため,2022年度に,国際学術雑誌へ投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している.その主な理由として,1.学術雑誌に1本論文が掲載された点,2.状態遷移を導入したモデルの構築および分析が終わり,投稿直前まで進めることができた点が挙げられる.特に,研究実施計画においては,2.のモデルの構築と分析に2年かかると想定していたため,順調に進展していると判断した. 1.により,状態遷移がない基本的なケースにおける分析結果が得られた.2.により,状態遷移があるとき,ないときと比較して,どのように企業の差別化(再差別化)および時点・閾値に関する戦略が変化するかを明らかにすることが可能となる.各研究の詳細な結果および状況については,【研究業績の概要】欄にまとめている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の目標として,1.状態遷移確率を導入した論文の国際学術雑誌への投稿,2.同論文の研究成果を基にした新しい論文の執筆,そして,3.その他の論文の執筆および国際学術雑誌への投稿を目指す. 1.に関して,共同研究者と最終チェックをしている状況であるため,終わり次第,投稿を目指す. 2.に関して,現状,トレンドやボラティリティに対して,ある強い仮定を置いたときのみしか解析的結果,および数値的結果を導くことができていない.そのため,これらの仮定の1つ1つに関して,より細かく検討することで,結果の含意がどのように変わるかについて検討を進める. 3.に関して,各企業が異なる需要の不確実性に直面する際の合併の戦略について,分析を行う.本研究を,2021年度末で終了する科研費のプロジェクトで進めていた.既に,国際学術雑誌から改訂要求を受けているため,それに対応し,アクセプトを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
ノート型パソコンを購入予定であったが,現在使用中のパソコンでも対応可能であったため,また,次年度により性能の良いパソコンを購入するため,購入を延期した.そのため,そのパソコンにインストールする解析用ソフトウェアについても,購入を見合わせた.
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