研究課題/領域番号 |
21K01470
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
打田 委千弘 愛知大学, 経済学部, 教授 (50305554)
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研究分担者 |
竹田 陽介 上智大学, 経済学部, 教授 (20266068)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 事業承継 / 親族企業 / 第三者承継 / 社会資本 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本研究は、所得・リスクの配分を家族内あるいは市場取引で行うかという「家族と市場の境界」の問題について、理論モデルを構築した上で、沖縄における実地調査に基づき実証分析を行うことを目的とする。研究の着想は、生産要素の調達を内製あるいは市場取引で行うかというコースの「企業と市場の境界」からの類推にある。地縁・血縁に基づく拡大家族が社会的アイデンティティを形成する沖縄を取り上げ、親族経営の事業承継を事例とする。 具体的には,Aghion and Tirole(1997)の不完備契約の下での権限委譲モデルを発展させ親から子へあるいは経営者市場で見出される第三者への名目権限の委譲が、どのような条件の下で安定した事業承継となるかについて、Alger and Weibull(2010)の動学的進化過程の安定性条件を用いて理論的に示す。また、沖縄の親族企業に対するアンケート調査やヒアリング調査を用いて実証するものである。 2023年度においては、2021・2022年度に引き続き親族内承継による安定的な企業成長はいかなる条件の下で達成されるかについて、承継プロセスにおける親族内の名目権限移譲に関する理論モデルの精緻化に取り組んだ。また、沖縄におけるソーシャル・キャピタルの重要性に関して、「沖縄県県民意識調査」個票データについて分析を着手し2023年11月に「公共心を通じたソーシャル・キャピタルの誘発効果-『沖縄県民意識調査』を用いた実証」 として研究報告を行った。 また、内閣府沖縄総合事務局・沖縄県等が主催したイベント:「地域の活動をつなぐ事業継承地域課題の解決と企業の成長に繋げるM&A」で、M&A企業に対するヒアリング調査に基いてファシリテーターを務め、沖縄県事業承継・引継ぎ支援センター等が発行する事業承継事例集に関する編集委員及びコラムを執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、第一に、親族内承継における安定的な企業成長はいかなる条件の下で達成されるかについて、名目権限の委譲に関する理論モデルの精緻化、命題に対する実証として、経営者だけでなく後継者にも意識や意思疎通の程度についてアンケート調査やヒアリング調査を実施することである。第二は、第三者承継において社会ネットワークの果たす役割について理論モデルの精緻化や現地でのディスカッション、経営者・後継候補者、事業承継支援機関へのヒアリング等を行うことである。 研究実績の概要でも示したが、2023年度は、2021・2022年度に引き続き、理論モデルの精緻化について検討を進める一方で、『沖縄県県民意識調査』個票データをベースとした社会ネットワークに関する指標化にも取り組んだ。一定程度の進捗はあったが、コロナ禍の影響もあり、事業承継やM&A対象企業へのヒアリング及びアンケート調査に関して、若干の遅れが生じている。今回、研究期間の延長が認められたため、那覇商工会議所等と共同で実施予定のアンケート調査に向けて準備を進めている。アンケート調査結果に関する研究報告等は、2024年度中に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2021・2022・2023年度と同様に、まず、親族内承継による安定的な企業成長はいかなる条件の下で達成されるかについて、名目権限の委譲に関する理論モデルの精緻化について、Alger and Weibull(2010)の動学的進化過程の安定性条件を用いて更に精緻化することを目指し最終的な成果を出したいと考えている。また、沖縄県事業承継・引継ぎ支援センターや那覇商工会議所など事業承継支援機関と共同で、経営者・後継者に意識や意思疎通の程度についてヒアリング調査やアンケート調査を進めたいと考えている。 第二は、第三者承継において社会ネットワークの果たす役割について理論モデルの精緻化を進め、『沖縄県県民意識調査』個票データを用いてソーシャル・キャピタルの指標化にも注力したいと考えている。また、経営者・後継候補者、事業承継支援機関へのヒアリング、セミナー等を実施したいとも考えている。2022年度に実施した日本M&Aセンターと共同で実施たアンケート調査も含めて、2024年度中に研究成果を報告予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、2021・2022年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、旅費や人件費の支出が困難であった。2024年度は、新型コロナウイルス感染症の影響も少なることが予想されるため、前年度の繰越額も含めて支出を予定している。
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備考 |
研究代表者である打田委千弘が2023年度に実施した本研究課題に関連する研究成果のHP https://www.aichi-u.ac.jp/kenkyu/news/66699
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