本研究では,インドネシアを事例に貿易自由化が国内の労働移動にどのように影響するのか,労働者の技能に注目した分析を行った.インドネシアの家計個票データを使い,労働者が地域特性をもとに移動先を選択する離散選択モデルを推定した結果,労働者は,関税が大きく削減された中間財を集約的に生産に用いる産業が集積している地域を移動先として選ぶ可能性が高いことが分かった.中間財の輸入増加はその取扱いに必要な熟練労働への需要を増加させることから,技能の高い労働者ほどそうした地域を好む傾向にあった.しかし,地域間の移動費用は高く,中間財の貿易自由化の影響は主に近隣地域間での移動を促す程度にすぎないことが示唆された.
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