研究課題/領域番号 |
21K01485
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤田 敏之 九州大学, 経済学研究院, 教授 (30297618)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 国際環境協定 / 所得移転 / 提携形成ゲーム |
研究実績の概要 |
本課題では,効率的かつ安定的な国際環境協定を実現するために,協定から抜けるインセンティブをもつ国に対し,協定に加盟することの見返りにいくらかの資金を譲渡する「所得移転ルール」の効果に焦点をあてる.協定加盟国間の移転である「内部移転」,非加盟国の一部がいわゆる「サポーター」となって,他の国の協定への加盟を促すために行う「外部移転」という2種類のそれぞれについてさらに現実的な仮定にもとづく分析を行うことを主な目的とする. 今年度は先進国・新興国を念頭においた2つのタイプの国が混在し,両タイプの間には汚染削減の便益・費用ともに大きな差異が存在するという仮定の下での分析を行った.その結果,内部移転も外部移転も安定な協定の拡大に貢献するが,外部移転のほうが有効性が高いということを理論的に示した.これは申請者の研究室にかつて在籍した研究者との共同研究成果であり,国際学術雑誌への査読付き論文として公表されている. さらに,外部移転のルールについての検討もすすめている.外部移転を扱う従来の研究においては,サポーターに移転額の提案を行う外部機関の存在が仮定されていたが,一定数の国がサポーターとして名乗りを挙げなければ制度が無効になるという「最小参加国数ルール」をおいた場合に,均衡におけるサポーター数が一意に決定され,外部機関の存在を仮定しなくても移転額がサポーターの合理的な意思決定の結果として導かれることを理論的に示した.この分析においても,2つのタイプの国が存在することを仮定しているが,費用や便益のパラメータに関する制約をおかずに,シミュレーションにより均衡を計算した.この成果は現在,学術誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題の初年度計画においては,予備的な分析に専念し,論文を公表する予定はなかったが,研究が順調に進んだため,成果として2つの論文を執筆し,1つを公表することができた.以上により,計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
投稿中の論文を学術雑誌に掲載できるように必要な作業を行う.またそれとともに,現在の分析をさらに進展させ,より現実的な仮定のもとでのモデル構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会が中止またはオンラインでの開催となり,予定されていた出張がすべて中止となったことが理由である.次年度に出張が可能であれば,繰越分を旅費に使用したい.それが困難であれば,主に数値計算のソフトウェア購入や,論文の英文校正など投稿にともなう費用などに使用する予定である.
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