本課題では,効率的かつ安定的な国際環境協定を実現するために,協定から抜けるインセンティブをもつ国に対し,協定加盟への見返りにいくらかの資金を譲渡 する「所得移転ルール」の効果に焦点をあてる.協定加盟国間の移転である「内部移転」,非加盟国の一部がいわゆる「サポーター」となって,他の国の協定への加盟を促すために行う「外部移転」という2種類のそれぞれについて分析を行うことを主な目的とする. 今年度は,昨年度に学術雑誌”Strategic Behavior and the Environment”に投稿した論文の改訂作業に集中した.論文の結論は,加盟国間で内生的に決定される最小参加国数ルールを含む外部移転制度のもとでの均衡(実現する安定な協定)が,移転を考慮しない場合の均衡とくらべ,大きく効率性が高いものになるということであり,均衡の存在に関する理論的分析およびシミュレーションによる数値実験を行っている.査読者の指摘に基づき,理論的分析を補強し,シミュレーション結果が偶然得られたものではなく,理論的に必然的であるということを示した.また最小参加国数ルールの意義などモデルの設定について丁寧な補足的説明を付け加えた.数回にわたる査読者,編集者とのやりとりを経て,本論文の掲載が正式に認められ,2024年の終わりまでには公刊される予定である. 本課題の総括として,3年という短い期間であったが,2件の論文を完成することができて十分に満足のいく結果を得ることができたのではないかと考えている.
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