研究課題/領域番号 |
21K01489
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
山上 浩明 成蹊大学, 経済学部, 教授 (70632793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / 緩和と適応 / 世代重複 / 国債 |
研究実績の概要 |
本研究課題に基づき、Fodha氏(パリ経済学校, パリ第1大学 教授)と共同執筆した『Mitigation , Adaptation, and Public Finance』の暫定的な草稿が完成した(以下、Fodha and Yamagami(2022)とする)。Fodha and Yamagami (2022)は、気候変動対策の2つの代表的施策である緩和(Mitigation)と適応(Adaptation)の組み合わせを検討する。特に、世代重複モデルにおいて、民間から供給される緩和と公的に供給される緩和を想定し、一括税と炭素税(消費税・産出税)によって、緩和への補助と適応支出を賄う財政政策の効果について考察した。その結果、緩和と適応は資本蓄積のレベルが十分に低いときには補完的、十分に高いときには代替的となることがわかった。また、最適な政策の組み合わせは、モデル内で想定された税金・補助金の組み合わせによって達成されることを確認した。 さらにFodha and Yamagami (2022)は、上記のモデルをベンチマークとして、2つの異なる財政政策についてモデルを拡張し、議論を展開した。まず、適応支出の財政ルールを導入したモデルから、財政ルールが緩和と適応の代替性(補完性)が影響を受けることを明らかにした。次に、ベンチマークに国債を導入したモデルでは、資本蓄積レベルが十分に高ければ、国債が資本蓄積を促す可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は海外渡航が難しい状況の中、リモートでの議論を重ねて到達したものである。本課題に関する最初の論文は形にはなったものの、本来であれば、対面での議論を集中的な期間の中で行う予定であった。しかし、それが昨年度は叶わなかったため、現状で順調に進展している範囲ではあるが、すでに多少の遅れを感じている。すでに完成した論文を発展させたものについての議論は遅れているので、今年度・来年度には形を作っていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
まずは草稿を報告する予定である。今年度は共同研究者がフランスの国際学術会議で報告する。すでに1つの会議において草稿版が報告された。そこで得られたコメントや質問を踏まえながら、引き続きFodha and Yamagami (2022)を推敲し、国際学術誌への投稿を目指す。 また、今年度内に実現可能であれば、出張を実施し、共同研究者との対面での集中的な議論を行いたいと考えている。また、そうでなくてもリモートでの議論を繰り返し行い、次の研究論文につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張が実施できなかったため、昨年度は予定よりも少ない支出額となった。その代替案として、国内の専門家の意見を聞く機会を多く持つために、十分な感染対策をしながら国内出張をし、学会やセミナー、または個別に対面で議論する機会を持ちたいと考えている。
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