研究実績の概要 |
Fodha氏(パリ経済学校, パリ第1大学 教授)と共同執筆した『Mitigation , Adaptation, and Public Finance』が完成した(以下、FY2023とする)。FY 2023は、気候変動対策の2つの代表的施策である緩和(Mitigation)と適応(Adaptation)の組み合わせを検討したものである。特に、世代重複モデルにおいて、民間から供給される緩和と公的に供給される緩和を想定し、一括税と炭素税(消費税・産出税)によって、緩和への補助と適応支出を賄う財政政策の効果について考察した。その結果、緩和と適応は資本蓄積のレベルが十分に低いときには補完的、十分に高いときには代替的となることがわかった。また、最適な政策の組み合わせは、モデル内で想定された税金・補助金の組み合わせによって達成されることを確認した。さらにFY2023では、上記のモデルの拡張版も考慮し、異なる財政政策についても検討し、財政政策の設計によって緩和と適応の代替性(補完性)が影響を受けることを明らかにした。さらに国債を導入したモデルによって、国債発行と資本蓄積の関係を明らかにした。 さらに、本研究課題に関して、鈴木史馬氏(成蹊大学教授, SOAS客員研究員)と『Green bonds and term premiums』を執筆した(以下、SY2023とする)。SY2023は、気候変動のもつ不確実性に注目し、代表的個人モデルにおいて気候災害が経済活動によって内生的に発生するモデルを構築した。また、その災害発生がマルコフ確率過程に従うものとした。SY2023は、このモデルにおいて満期の異なる国債を政府が発行すると裁定機会が発生することを明らかにした。また、最適政策は均衡財政を満たすが、均衡財政を満たせない場合は国債が社会厚生を改善することを明らかにした。
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