研究課題/領域番号 |
21K01490
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
中村 豪 東京経済大学, 経済学部, 教授 (60323812)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 企業間取引 / マークアップ / 生産性 / 市場競争 |
研究実績の概要 |
2021年度は主として本研究で必要となる企業データおよび取引関係データの収集、整理に充てることとなった。 本研究は、企業の生産性・マークアップの大きさと、企業間取引の関係に着目し、日本経済における市場競争のあり方を実証的に明らかにすることを目的としている。分析対象として、日本経済をなるべく包括的に捉えようとすることから、できるだけ広範に日本企業のデータを集める必要がある。 2021年度は、経済産業研究所(RIETI)の協力を得て、経済産業省の企業活動基本調査の個票データを2000年以降、また東京商工リサーチの企業間取引データを2007年以降の分について入手することができた。これらは別個に収集されているデータであるため、企業属性等の情報からマッチングさせる必要があり、また市場での競争に着目したいことから、業種区分についても整理する必要がある。そのための作業を行った結果、各年度に3万社前後の企業を含む2007~19年のパネルデータセットを構築した。これが、本研究で主たる分析データセットとなる。 現在は、このデータセットを用いて各企業のマークアップと生産性の計測までを行っている。生産性については、Levinsohn and Petrin (2003)などのproxy methodを用いて業種区分ごとの生産関数を推計することから計測しており、マークアップについてはDe Loecker and Warzynski (2012)の生産関数アプローチにより、やはり業種区分ごとの生産関数の情報をもとに計測している。同時に東京商工リサーチの企業間取引データより、データセットに含まれる企業が取引ネットワーク内でどのような位置にあるのかを、取引企業数や、取引相手の企業数のデータを整備することから数値的に示す作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では日本企業を広範にカバーし、生産性・マークアップの大きさの計測が可能であり、さらに企業間取引の状態を捉えることもできるデータセットを用意する必要がある。このようなデータを個々の研究者レベルで収集するのは困難であるところ、経済産業研究所(RIETI)の協力を得て、2021年度中にパネルデータセットの構築まで実施することができた。 複数の独立して収集されたデータソースを使用しているが、2021年度における作業の結果、企業活動基本調査の個票データのうち97%のものについて、東京商工リサーチのデータとの接続が可能になっている。分析に必要なデータを高い質を保ったまま整備できているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
分析に必要なデータの整備は実現できたので、2022年度はこれを用いて計量経済学的な分析を進めることになる。まずは生産性やマークアップの大きさと、企業間取引の状態の間にある関係を探ることになる。すなわち、被説明変数として各企業の生産性やマークアップの大きさを用い、各種企業属性(例えば企業規模)を制御しながら、上流側の取引相手の数、下流側の取引相手の数などを説明変数として、その係数に着目し、日本企業の間にある取引ネットワークがどのような姿をとっているのかを明らかにしたい。 その上で、さらに取引関係の変化と生産性およびマークアップの大きさの関係に分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は情報収集や研究発表のための学会参加を予定していたが、新型コロナの影響により出張を伴う学会の参加が著しく制約された。 また、必要があれば企業属性のデータベースを購入することも検討していたが、現時点では経済産業研究所より提供を受けたデータによって分析を進められていることから、その分の支出も行われなかった。 学会の開催状況は依然として見通せないところではあるが、高度な分析を行うための計量経済分析用ソフトウェアの購入や、追加的な企業属性データベースの購入、あるいは膨大なデータを扱うための設備備品の購入なども検討の価値があるため、それらによって円滑な使用を図るものとする。
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