研究課題/領域番号 |
21K01493
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研究機関 | 金沢星稜大学 |
研究代表者 |
庫川 幸秀 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (80749200)
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研究分担者 |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 調整力市場 / ネガワット / エネルギー利用効率 / 火力発電 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、電力の需要側における電力エネルギー利用効率が「調整力市場」に与える影響を理論的に明らかにしようとするものである。需要側の電力エネルギー利用効率に関する従来の研究や政策議論では、「電力消費市場」への影響に焦点が当てられ、「調整力市場」への影響には着目されてこなかった。電力の需要側である電力消費者による節電(量)は対価を伴い、それらは調整力市場を介して取引される。省エネ性能の向上等により電力の利用効率が良くなれば、単位当たりの電力の価値も上昇する。したがって需要側における電力エネルギー効率の水準は、節電報酬の対価として提供する「節電量」の限界費用の水準を左右する要因であり、調整力市場と密接な関わりを持つはずである。本研究では、需要側の電力エネルギー利用効率が「電力消費市場」と「調整力市場」に与える影響と、両者の間で生じるトレードオフ関係を理論的に明らかにすることを目的として分析を行っている。具体的な実施計画としては、庫川・田中(2018)のモデルをベースとして、(1)電力消費市場価格の内生化による中・長期的視点からの分析、(2)蓄電池を含む調整力市場モデルへの拡張、を行うこととしている。2021年度は電力小売市場を、再生可能エネルギー発電事業者と化石燃料発電事業者から成るクールノー競争市場と想定して、電力小売市場価格の内生化(上記(1))を行い、小売市場の均衡解をエネルギー利用効率と炭素税率の関数として表した。これにより、需要側のエネルギー利用効率や炭素税率が、電力小売市場における火力発電量と再エネ発電量、および調整力市場におけるネガワットと火力発電量のそれぞれに与える影響について、比較静学分析の実施が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により授業その他での対応が必要になったことで、若干の遅れが生じている。具体的には、前項で述べたように、2021年度は電力小売市場の均衡解を、需要側のエネルギー利用効率と炭素税率の関数として内生化したものの、これらのパラメータ(エネルギー利用効率と炭素税率)の影響について理論的な整理が完了していない。また、蓄電池を含む調整力市場モデルへの拡張には着手できていないため、進捗状況は「やや遅れている」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、本研究課題の実施目標は、庫川・田中(2018)のモデルをベースとして、(1)電力消費市場価格の内生化による中・長期的視点からの分析、(2)蓄電池を含む調整力市場モデルへの拡張、を行うこである。2021年度までの進捗状況として、上記(1)について、電力消費市場価格の内生化を行い、電力消費市場と調整力市場の市場均衡解を、それぞれエネルギー利用効率と炭素税率の関数として導出するところまで完了している。今後の課題は、これらの変数(エネルギー利用効率と炭素税率)が、電力小売市場における火力発電量と再エネ発電量、および調整力市場におけるネガワットと火力発電量のそれぞれに与える影響を明らかにすることである。ここで、調整力市場への影響については、すでにある程度の目途がついているため、小売市場への影響の分析を重点的に進める必要がある。それと同時に、経済主体の蓄電行動のモデル化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルスの影響により、移動を伴う研究活動を見合わせ、また、前述のように進捗状況においても若干の遅れが生じた。このことから、打ち合わせや研究会・学会への参加、成果発表や論文作成などの研究活動について、前年度に予定していた実施内容を次年度に実施する必要があり、それに伴い次年度の使用額が生じている。
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