研究課題/領域番号 |
21K01498
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
冨浦 英一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40273065)
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研究分担者 |
伊藤 萬里 青山学院大学, 経済学部, 教授 (40424212)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | テレワーク / COVID-19 / 企業ミクロデータ / グローバリゼーション |
研究実績の概要 |
コロナ禍においては企業は感染拡大を抑止するため急遽テレワークの導入を求められたが、導入は一部の企業に限られた。テレワークに移行するかの判断において個々の従業員の裁量は限られることが多いと考えられるため、企業レベルの分析に適している。本研究では、テレワークの導入状況について日本の製造業・卸売業に属する企業に実施した独自の企業アンケート調査の結果を、企業の基本的特性を把握できる政府統計(経済産業省企業活動基本調査)の企業ミクロデータとリンクさせ、コロナ禍以前におけるグローバリゼーション(輸出、輸入、海外直接投資)が与えた影響を計量的に実証分析した。その結果、グローバル化を進めていた企業(特に企業内貿易よりも企業間貿易を行っていた企業)の方が有意にテレワークの導入に積極的であったことが明らかになった。この傾向は、企業規模など企業の基本的特性を制御した後でも頑健であった。また、民間データベース(TSR)における企業間取引関係データともリンクさせ、卸売業においては顧客企業が多い企業はテレワークを控えた面があったが、コロナ禍以前において取引相手企業が多い企業(特に調達先企業の多い製造業企業)の方がコロナ禍の時期にテレワークを導入する傾向が強かったことも見出した。いずれも、外国や他社との調整の経験が、導入に際し社内外で調整を要するテレワーク導入を円滑化した可能性を示唆するものである。これらの成果は、査読を経て国際学術誌(The World Economy, Japan and the World Economy)に掲載された。この他、関連した研究も取り進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題研究の成果である論文が査読国際学術誌に掲載され、2023年度における研究は概ね順調に進めることができたが、コロナ禍の影響もあり初年度における研究の遅れが影響し、研究期間を延長して研究成果の最終とりまとめを行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を一年延長し、研究成果を最終的にとりまとめるとともに、今後に残された課題を整理し、次の研究につなげることとする。具体的には、コロナ禍におけるテレワークの導入状況が企業により大きく異なった要因については、コロナ禍以前における企業の特性、特にグローバル化(輸出、輸入、海外直接投資)や企業間取引(仕入先や顧客企業の数)の状況が影響しているかに関し行った計量実証分析の成果をとりまとめた2本の論文が国際査読学術ジャーナルに掲載されたところで十分に成果をあげたと認識しているが、分析が未だ十分とは言えない課題も残っている。例えば、コロナ禍におけるテレワークの導入状況がその後の企業パフォーマンスに与えた影響については、その後の企業関連指標のデータが利用可能となっていくに連れて実施できる分析の範囲が広がっていく。この点については、データの利用可能性を慎重に点検しながら検討を進めていく方針である。また、テレワーク実施の技術的な前提となるデジタル化については、今回の課題研究メンバーにより従来から共同研究を行ってきたところであることから、企業のデジタルデータの収集活動について、企業間の違いを企業特性との関係で計量実証分析していくことは重要であると考えており、今後の研究において重点的に取り組んでいく計画を立てている。企業のテレワーク導入には多様な要因が絡んでいることから、これら以外の課題についても、今後の研究につなげるよう分析可能なものを抽出整理していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響もあり、初年度における研究が遅れたため、研究成果の最終とりまとめに十分な時間を確保すべく研究期間を延長することとしたため。分析結果を整理・保存するために必要な情報関連機器を整備するとともに、分析結果について他の専門家の意見を求め研究成果を練り上げるべく学会や研究会に参加するための支出などに使用する計画を立てている。
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