研究実績の概要 |
本研究課題では、途上国における民営化が先進国から途上国への環境技術移転に与える影響を理論的に分析する。特に、国際環境技術移転が可能な場合に、途上国における民営化が環境的な側面からも正当化される条件を明らかにすることを目的としている。 初年度は文献調査をおこなった。文献調査をおこなう中で、技術移転をおこなう際の契約形態(1社とのみ契約するか複数社と契約するか)も途上国の民営化が環境技術移転に与える影響を分析する際に重要な要因の一つであることが明らかになった。特に本研究課題に関連した文献として、Kim et al (2018)は、途上国の民営化は、ライセンス契約を排他的取引(1社のみに技術供与)から非排他取引(2社に技術供与)に変更させ、ライセンス料を抑えることで、途上国の社会厚生を改善させることを示している。 本研究課題の基本モデルでは、技術の移転先である途上国では国営企業1社しか存在しないため、契約形態と民営化の関係については想定していなかったが、発展的課題として複数社との契約についても分析をおこなう。特に、先行研究では考慮されていない移転される環境技術の質についても分析に導入することで、契約形態の変更と移転される環境技術の質との関係も明らかにし、途上国における民営化が環境的な側面からも正当化されるための条件について、より幅広い情報提供をおこなう。 Seung-Leul Kim, Sang-Ho Lee & Toshihiro Matsumura (2018) Eco-technology licensing by a foreign innovator and privatization policy in a polluting mixed duopoly, Asia-Pacific Journal of Accounting & Economics, 25:3-4.
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