研究課題/領域番号 |
21K01505
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
金盛 直茂 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (40644745)
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研究分担者 |
土居 潤子 関西大学, 経済学部, 教授 (00367947)
青木 芳将 立命館大学, 経済学部, 教授 (90572975)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 所得格差 / 海外援助 / 天然資源 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
2021年度は対面での研究打ち合わせを十分実施できなかったため、研究代表者は先行研究に天然資源へのアクセス状況が異なる2民族の導入を試みる一方、研究分担者は独自に関連先行研究のサーベイを実施した。これらの研究実績をまとめると以下の2点となる。 第一に、天然資源や海外援助の増加が、民族間の所得格差を持続させることを説明するために、Besley (2017)に天然資源や民族の違いを導入したモデルを構築した。私たちは、天然資源や海外援助の増加が民族間の資源獲得競争を誘発し、民族間の所得格差を発生させるが、その格差は心理的要因によって持続すると考えている。そのため、心理的な要因で発生する所得格差を分析しているBesley (2017)に天然資源や民族の違いを導入したモデルを構築した。本モデルにより、天然資源や海外援助の増加による民族間の所得格差が拡大するのか縮小するのかのメカニズムが明らかになる。それらを踏まえ、所得格差の是正のためには、どのような政策を目指すべきなのかが明らかになり、また、どのような海外援助を行うべきかについて、議論が可能となる。 第二に、心理的要因が所得格差にどのような影響を与えるのかについて新たな知見を得るために、行動経済学と所得格差のモデルを検討した。具体的には、Besley (2017)の論文がどう拡張され、発展したかを理解するために、関連論文をサーベイした。また、文化経済学の知見を得るために、文化経済学に関する論文のサーベイを行っている。 <参考文献> T, Besley, 2017, "Aspirations and the political economy of inequality”, Oxford Economic Papers, 69 (1), 1-35.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目に行うことの第一の目的は、aspiration(目的志向)と所得格差を分析した先行研究を調査することである。このため、行動経済学と所得格差のモデルを提示しているBesley (2017)を調査した。また、それらの論文がどう拡張され発展していったかを理解するために、関連論文をサーベイした。この点は順調に研究を進めることができたと考えている。 第二の目的は、天然資源や海外援助の増加によって、民族間の所得格差が持続的になることのメカニズムを明らかにすることである。この点に関して、我々はモデルを構築して検討したが、非常に狭い範囲でしか結果が成立せず、モデルの修正が必要になることが分かった。モデル分析が想定より進まなかったので、やや遅れているという判断となった。コロナ禍により共同研究打ち合わせや学会参加が難しく、そのことが進捗状況を遅らせてしまったと考えられる。 <参考文献> T, Besley, 2017, "Aspirations and the political economy of inequality”, Oxford Economic Papers, 69 (1), 1-35.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、1年目で構築した理論モデルを一般化する。その後、政策変数を導入し、経済政策による所得格差、経済成長率や社会厚生への質的効果を示す。具体的には、累進的な所得税を導入し、所得格差を是正するだけではなく、心理的要因の効果を緩和させ、持続的な所得格差を発生させないことを説明する。そのことによって、資源豊富国が、適切な政策をミックスさせることによって、資源の呪いに陥らないことを示すことができる。 研究分担者は、1年目に引き続き、天然資源や海外援助と所得格差に関する実証研究、aspirationを含めた行動経済学の先行研究をサーベイする。また、構築した理論モデルを、MATLABを使用し、どのような経済政策が 所得格差や経済成長率を改善し、社会厚生を最大化するかを数値的に示す。このことによって、ナイジェリアやスーダンのような資源の呪いに 陥っている国々に、経済政策の評価を数量的に提示することが可能になる。そのために、アフリカ経済のデータを調査・収集し、それらをパラメータとして使用し、カリブレーション分析を行う。この研究が潤滑に進むために、研究代表者と分担者は、研究打ち合わせによって研究の進展を確認し、研究の途中結果を内外の学会等で発表することにより、コメントを取り入れ論文の改善を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により共同研究打ち合わせや学会参加が難しく、旅費に十分支出することができなかった。令和4年度は、コロナ禍が落ち着いてくると思われるので、活発な共同研究打ち合わせ、学会参加・発表を行いたい。
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