研究課題/領域番号 |
21K01506
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
友原 章典 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (80448810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 外国人労働者 / 移民 / 失業率 / 産業 / 人手不足 |
研究実績の概要 |
移民受け入れによる影響は複雑であるため、どのような場合に市民に恩恵があるかを経済学的に分類して整理することがこの研究プロジェクトの目的である。その際、地域の差異が重要な要素となる。これまでの研究を見てみると、移民の受け入れ国における影響、つまり、国全体でみた平均的な影響が研究されてきた。しかし、実際に移民の受け入れにおいて受け皿となる地方政府の観点から研究する必要性が提唱され始めている。地域によって移民を受け入れている程度がかなり違うことを考えると、こうした実務面からの要望は当然であろう。ここで、国によっては、ある地域が特定の産業を代表している場合がある。そこで、地域だけでなく、場合によっては産業の特性によって、移民受け入れの影響が変わる可能性を示せれば、実務面だけでなく、学術的な貢献も大きいだろう。 2022年度は日本の産業別の失業率に焦点を当て、産業によって外国人労働者と失業率にどのような関係があるかを中心に研究を行った。移民(もしくは外国人労働者)を受け入れると失業率がどうなるかについては、あまり影響がないというのがこれまでの研究に多く見られる結果だ。しかし、これらの結果は国別や地域別のように地理的な失業率を分析したものだ。この研究では産業別の失業率に焦点を当てている点がこれまでの研究とは異なっている。その分析によると、人手不足である産業では、外国人労働者が増えると失業が減ることが示される。人手不足のために稼働していなかった案件が、外国人労働者の流入によって稼働し始めることで、働き口を生み出す可能性が示唆される。それ以外の産業では、外国人労働者の増加は失業率に影響を与えていない。この研究では、人手不足かどうかという産業の特徴によって、移民(もしくは外国人)労働者の増加が失業率に与える影響は同じでないだけでなく、失業率が下がるという興味深い可能性も示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍でRAの確保が困難であったことだけでなく、学内の公務(国際研究センター長など)が重なったことや体調不良もあり、データの入力・整理が予定通りに進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は在留外国人の存在が犯罪に影響を与えているかというトピックを中心に分析を行う予定だ。この研究の背後には、外国人の増加がもたらす住環境の変化によって、犯罪が誘発されているのではないかという懸念がある。たとえば、生活習慣の違う外国人が多い地域では、ごみが散乱したり、騒音が激しかったりすることから近隣住民とのトラブルに発展した例がいくつかある。また、学術的にも、地域における民族の多様性が進むと、住民間の信頼が損なわれ、地域のつながりが弱くなるという研究がある。そこで、東京都のデータを使用し、市区町村における犯罪数と在留外国人数の間には何らかの関係がみられるかを分析する。これまでの研究を概観すると、移民が犯罪に与える影響に関しては、あまり影響がないとする研究がある一方で、犯罪が増加するという研究もあり、見解の一致を見ているとは言えない。市区町村のような細かな地理的分類といった具合に、これまでの研究で考慮されていない要素に焦点を当てて、それに適した計量経済モデルを使用して分析することで、見解の不一致をもたらす原因について明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの入力・整理が予定通りに進まなかったことだけでなく、コロナ禍で出張を控えたことや学内公務を含む複数要因が重なり、研究が思うように進まなかったため。2023年度はデータの入力・整理作業を専門業者に依頼する費用、論文の英文校正とジャーナルへの査読・投稿料、プレゼンテーション用の資料作成、資料(含む書籍やデータ)の購入などを中心に支出を行う予定である。
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