研究課題/領域番号 |
21K01510
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
山村 能郎 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (60284353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ビジネスサイクル / 最適投資時点 |
研究実績の概要 |
本研究では、景気動向とは別に固有のビジネスサイクルが生じる不動産市場を対象に、投資・開発ブームとその後の収縮に関する考察を行う。寡占的な市場構造を有する不動産市場を資産市場の例として取り上げ、そのサイクルのメカニズムの解明を第1の目的は、不動産投資・開発行動を定式化した リアルオプションモデルを構築である。経済的なショックが資産市場に与える影響をシミュレーションによって表現し、市場固有のサイクルを生 み出すメカニズムについて考察する。第2に、不動産価格の価格時系列データから状態空間モデルを利用して、トレンド、自己回帰、季節性、 ノイズ等の成分を分離し、実際の市場データからサイクル成分を抽出することを目的としている。 上記の目的の下、2021年度は、リアルオプションモデルによるビジネスサイクルの分析を行なっている。既存研究での複占競争モデルを発展させ、情報非対称性が開発タイミングどのような影響を与えるかについて分析している。先行研究を参考に不動産開発に伴う獲得収益の複占モデルを構築し、各主体の直面する需要と投資費用に情報の非対称性、競争格差が存在する場合、複占モデルにおける先導者の投資時点にどのような影響を与えるかについて理論的な考察を行っている。収益・費用の動的構造を明示的に扱い、従来のモデルと比較して開発時点でどのような差異が生じるかについて検討を今後行っている。今後、一連の不動産投資・開発のモデル化によって、不動産市場に生じるビジネスサイクルと情報の非対称性、競争力格差との関連性を理論 的に明らかにするとともに、経済的ショックとビジネスサイクルとの関連性についても考察する予定である。また、情報格差が、投資タイミングに如何なる影響を受けるかを検証するとともに、平均回帰過程等によって情報格差が時間と ともに変動するより一般化したモデル構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、既存研究を発展させ複占競争市場を想定したリアルオプションモデルを構築している。このモデルは、不動開発費用や市場情報等の情報格差により不動産開発のタイミングにどのような影響が生じるかの基礎モデルである。格差が複占モデルにおけるリーダーとフォロワーの行動、特にフォロワーがリーダーに転換する条件等について基礎的な閾値をシミュレーションによって考察している。以上から研究活動は概ね順調に進んでいるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は不動産市場に生じるビジネスサイクルと情報の非対称性、競争力格差との関連性をシミュレーションによって明かにする予定である。同時に、大規模は経済的ショックとビジネスサイクルとの関連性についても考察する。また、投資コストや価格変動の確立過程については、対数正規過程を前提としてモデル構築を行なっているが、平均回帰過程等に異なる過程によって分析結果がどのように変動するか、より一般化したモデル構築を目指す。 一方、不動産市場データによるビジネスサイクル抽出を目指す。国土交通省で公表されている不動産インデックス(住宅、商業)や山村(2020)などで分析し た商業地不動産インデックスなどの時系列データを利用して状態空間モデル(Tanokura & Kitagawa(2015)等)を推定し、トレンド、季節性、 自己回帰などの成分を抽出し、市場のサイクルの抽出、実証分析を行う。この結果を利用して、シミュレーションモデルのパラメータに関する妥当性を検証し、政策分析に資するシミュレーションの精緻化を試みる。また、外的なショックが市場に与える影響についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症流行により当初予定した研究計画の一部が実施できなかった。特に、対面を前提とした不動産開発事業者および関連団体へのヒヤリング調査については実施ができていない。同様に、学会・研究集会の参加報告については、概ねオンラインでの実施であった。また、シミュレーション等については、研究代表者が従来使用している設備等を利用したためやPC等の支出は次年度に繰り越すことしている。以上から研究費の多くを次年度に繰り越している。
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