研究課題/領域番号 |
21K01511
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 彩子 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (20327696)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 官民連携 / 上下水道事業 |
研究実績の概要 |
本研究は日本の上下水道産業にて官民連携を推進していくにあたり、それが経営の効率化や料金にどのような影響を与えるかを実証研究するものである。 今年度はフランスの既存研究を中心に文献調査を行った。フランスでは1853年にはじめて民間企業が水道産業に参入し、2000年代では80パーセント近くの水道運営市町村が何かしらの形で上水道事業を民間委託していた。しかし、パリやニースで水道事業が再度公営化されたことは記憶に新しい。フランスの民間企業運営による料金の高騰についての研究機関などのレポートは多く書かれており、なかでも民間企業の市場支配力を問題視するものが多く見られた。 一方、学術論文としては自然独占産業における再公営化についてかなり多くの議論がされていることがわかった。当初は規制の経済学の範疇で研究をすすめる計画であったが、再公営化については民間事業者とのフランチャイズ契約の契約更新時における選択のひとつとして考えられることが多く、不完全契約理論やオークション理論に研究を広げるべきことがわかった。また、PPP(官民連携)においては、二つの契約(インフラの構築とその経営)をバンドルするか否かの問題としても取り上げられていることが解った。 実証研究では、再公営化が契約が不完全であることに対する反応であるという結果もでている。またフランチャイズ契約の更新時に、既存民間企業の機会主義的行動を制御できる大都市では再公営化や契約相手の変更などの選択も自由に行われているようであるが、小さな市町村は既存の民間企業のパフォーマンスにかかわらず契約を更新する傾向があるという結果も見られた。日本が官民連携を推進するにあたって参考にすべき研究結果であると考える。文献調査は報告書としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画では2021年度中に特別研究制度を利用した在外研究を開始することになっていたが、コロナウイルスによるパンデミックの影響で在外研究が延期となり、2022年度からの開始となった。このため2021年度に計画していたイギリスやヨーロッパなどでの現地ヒアリングを行うことはできなかった。しかし、早稲田大学水循環研究所の研究の一環として、日本の水道事業者へのヒアリングや海外で水道事業を行う日本企業に関する研究報告に参加し、日本の水道事業に関する知見を広げることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
官民連携(PPP)や再公営化における諸外国の状況は文献調査によりかなり明らかになった。次は日本の水道事業における各市町村の民間依存度を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に計画していた在外研究がコロナウイルスによるパンデミックのために延期されたため。
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