研究課題/領域番号 |
21K01511
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 彩子 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (20327696)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再公営化 / 上下水道事業 |
研究実績の概要 |
本研究は日本の上下水道産業にて官民連携を推進していくにあたり、それが経営の効率化や料金にどのような影響を与えるかを実証研究するものである。 今年度は在外研究制度を利用し、米国のカリフォルニア大学アーバイン校で研究を実施した。当初はイギリスやヨーロッパなどでの在外研究を行い、再公営化が起こっている現地でのヒアリングを実施する計画であったが、コロナ禍で受け入れ先を見つけることが困難であり、米国での在外研究となった。しかし、現地の水道会社のセミナーに参加するなど、カリフォルニアの水道事業の知見を広げることが出来た。
また、フランスの既存研究を中心に昨年度行った文献調査も引き続き行い、例えばイギリスでも民間企業が19世紀に水道事業を開始し、そのネットワーク構築には民間企業が重要な役割を担ったが、その後急速に公営企業に転換していったことがわかった。しかし、その後やや遅れて水道事業が開始されたドイツではイギリスの技術輸入を中心に、公営企業がそのネットワーク構築を担っている。 一方、昨年度関連トピックとして研究対象を広げてきた再公営化に関しても、早い時期のイギリスやフランスだけでなく、南米でも多くの再公営化の事例があることがわかった。再公営化については民間事業者とのフランチャイズ契約の契約更新時における選択のひとつとして考えられることが可能であり、その選択は、既存民間企業の機会主義的行動を制御できるか否かに関連するようである。日本の水道事業は元来小さな自治体が主体となって担ってきているため、日本が官民連携を推進するにあたって参考にすべき研究結果であると考える。また水道事業の実施主体の広域化についても考えていくべきであると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は在外研究制度を利用し研究に集中することが出来たため、昨年度までの遅れをほぼ取り戻すことができた。しかし、日本の水道事業の民間依存度の調査に関しては未だ事例も少なく、ひとつひとつの事例を見てデータを収集する必要もあることから、計画通りに進んでいるとはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めていくなかで、海外で観測されている水道事業の再公営化の現象は、日本の水道事業の官民連携を推進していくにあった無視することができないことだと考えた。しかし、再公営化の研究と官民連携の研究は深く関わり合いがあることは自明であるが、一つの研究トピックとしてまとめて研究を推進するには広すぎるように思われた。よって、まずは再公営化の研究をまとめてから、官民連携の研究をまとめる、という様に別々の論文・報告書として扱いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の交付金を前倒しで今年度に繰り上げていたが、それを全て使い切ることがなかった。次年度使用額は研究成果を論文にする際の英文校正費などに充てる予定である。
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