研究課題/領域番号 |
21K01517
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
田中 清泰 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済統合研究グループ, 研究員 (30581368)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 特恵関税制度 / 原産地規則 / 貿易 / 縫製品 / 欧州連合 / 開発途上国 |
研究実績の概要 |
本年度は、欧州連合(EU)が特恵関税制度の原産地規則を緩和した効果を検証した。特恵関税制度の受益国における輸出企業が特恵関税制度を活用するためには、制度で規定された原産地規則を満たす必要がある。原産地規則が厳格な場合、製造工程における輸入中間財の利用が強く制限される。原産地規則が緩和されると、輸出企業は輸入中間財の利用がより柔軟になり、特恵関税を利用して輸出を拡大できる。そのため、特恵関税制度における厳格な原産地規則の緩和は、受益国である開発途上国の輸出を促進する効果が期待できる。 EUは、アフリカ、カリブ海および太平洋 (ACP)諸国と長い提携関係を築いており、2007年に暫定経済連携協定(IEPA)を締結した。また、EUは一般特恵関税制度において武器以外のすべてイニシアチブ(Everything But Arms, EBA)を2001年に導入して、一般特恵関税制度における新しい原産地規則を2011年1月に施行した。これらの特恵関税制度では、EU市場に対する無税無枠の市場アクセスは変わっていない。一方、縫製品の原産地要件は、IEPA受益国に対して2008年から、EBA受益国に対して2011年から緩和された。その結果、EU加盟国においてIEPAとEBA受益国が占める輸入シェアは、ニット衣類において2005年の13.7%から2015年の26.6%に増加した。 本研究課題では、原産地規則の緩和がIEPAとEBA受益国の縫製品輸出に与えた効果を推定した。分析の結果、IEPA受益国のニット衣類と布帛衣類の輸出には有意な影響を与えていないが、EBA受益国の布帛衣類の輸出額は、原産地規則の緩和によって36.3%増加していることが明らかになった。また、EBA受益国のバングラデシュとカンボジアが、EU向け輸出を急拡大していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発途上国に対する特恵関税制度において、欧州連合(EU)が原産地規則を緩和した効果を検証した論文が英文査読付きジャーナルに掲載された。こうした点で、研究活動は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
原産地規則の緩和は貿易を促進する点を実証した一方で、貿易拡大によって国内経済にどのような変化が起こるのか、十分に明らかになっていない。今後は、原産地規則の緩和が国内経済に与えた影響について、カンボジアのミクロデータを活用して検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大の影響により、当初予定していた国際学会の参加や現地調査について調整が困難になったため、次年度の出張経費として使用する予定である。
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