研究課題/領域番号 |
21K01519
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
藤井 麻由 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (70648328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 労働市場 / 働き方 / 勤務スケジュール / 潜在クラスクラスター分析 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では,筆者が2022年2月に行ったインターネット調査のデータを用いて,日本の雇用者の勤務スケジュールの実態把握を行った. 勤務スケジュールは「雇用の質」を決める重要な要素であるが,過去数十年間で世界的にその多様化が進み,コロナ禍でこの動きが加速した.勤務スケジュールの多様化は,一方では,働き方に関する労働者の選択を増やすという形で実現してきた.他方で,勤務形態の多様化は,非典型時間帯労働に従事する者や,変動が激しく予見可能性が低い労働時間で働く者の増加という形で表れていることを示す国外の研究もあり,近年雇用者が経験している勤務スケジュールを多面的に把握する試みが必要とされている. こうしたことを背景に,本研究では,米国の先行研究に基づき,日本の雇用者の勤務スケジュールの実態を(1)労働時間の長さ,(2)勤務時間帯,(3)予見可能性,(4)制御可能性の4つの側面の組み合わせから把握することを試みた.そのために,潜在クラスクラスター分析を用いて,勤務スケジュールの4つの側面を捉える変数群に基づき雇用者を類型化した.分析の結果,主に以下の2点が確認された.第一に,今回のサンプルでは4つの類型が識別され,4つの側面から見て複合的に不利な勤務スケジュールで働く雇用者グループの存在も示された.第二に,勤務スケジュールの類型間で,個人の年齢や学歴,就業形態,業種,職種等の分布は異なり,特に複合的に不利な勤務スケジュールで働くグループでは,運輸・郵便や医療・福祉といった第三次産業で,サービスの仕事に従事している割合が高かった. 今回の分析から,日本においても勤務スケジュールは多様であり,複合的に不利な勤務スケジュールで働く雇用者が一部の業種に集中している実態が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,2022年度に国際学会で報告した雇用の質と雇用者の健康に関する研究を,査読付き英文ジャーナルに掲載することができた.また,国外の研究動向に基づき,雇用の質の重要な要素の一つである勤務スケジュールに焦点を絞った研究も行った.具体的には,初年度に行ったインターネット調査のデータに基づき,日本の雇用者の多様な勤務スケジュールの実態を把握するための研究を実施した.そして,その成果を国内学会で発表して論文にまとめることもできた.しかし,本科研の目的をより精緻に達成するための更なる研究を実施し,その成果をまとめて発表するまでは至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,本科研の目的をより精緻に達成するために,これまでの単年度のデータに基づく研究を発展させ,雇用の質のダイナミックな(キャリアパス上の)変化と雇用者の健康の関係について研究を行う.本研究の成果は,今年度中に論文としてまとめて学会等で発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
「今後の研究の推進方策」に記載した研究を進めるために必要となった.特に,論文の英文校正のために使用する予定である.
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