当該研究では、ロボットによる自動化や人工知能(AI)技術などの技術革新が労働市場にどのような影響を与えるか、特に雇用や賃金に焦点を当てて分析することを主たる目的としている。また、技術革新が進む経済における経済政策や制度の役割についても考察し、特に財政政策に注目する。 ロボットやAIが労働市場に与える影響については、研究分担者の名古屋大学経済研究科の工藤教孝教授と共に、労働市場の摩擦を考慮した動学的一般均衡モデルを用いて、カリブレーションならびにシミュレーションの手法で理論的・数量的に分析を行った。研究結果は学術論文"Robots and Unemployment"としてまとめ、セミナー等で報告し、査読付き海外学術雑誌に投稿した。また、当該研究を進める中で、労働市場の摩擦を分析する標準的なサーチ・マッチング理論に関する追加研究も行い、その成果は、学術雑誌Economic ModellingやEconomics Bulletinに掲載された。 AIやロボットによる自動化など現在進行中の第4次産業革命は雇用・労働市場に大きな影響をmもたらすとみられている。これに関する一般の理解を深めるために、『101のデータで読む日本の未来』(PHP研究所)、『51のデータで明かす日本経済の構造』(PHP研究所)、『一人負けニッポンの勝機 世界インフレと日本の未来』(ウェッジ)を執筆し、出版した。 また、技術革新が進む経済での財政政策の役割について分析を行い、その効果に関する研究をもとに、専門書『日本の財政政策効果 高齢化・労働市場・ジェンダー平等』(日本経済新聞出版)を執筆、出版した。また、査読付き学術雑誌Economics Bulletin、Macroeconomic Dynamics、IZA Journal of Labor Policyなどに論文を掲載した。
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