研究課題/領域番号 |
21K01529
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
釜田 公良 中京大学, 経済学部, 教授 (50224647)
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研究分担者 |
平澤 誠 中京大学, 経済学部, 教授 (50706801)
佐藤 隆 下関市立大学, 経済学部, 教授 (90235359)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環境外部性 / 人口 / 教育 / 遺産 / 所得格差 / 最適政策 |
研究実績の概要 |
さまざまな経済活動が環境に影響を与えうるが,経済主体はそれを十分に認識しておらす、多くの選択変数が外部性による歪みを伴う。本研究では、こうした環境外部性の下で、環境・出生数・教育投資・世代間所得移転・所得格差の間の相互作用を明らかにし、それに基づいて社会的最適を達成するための政策的枠組みを提示する. 2023年度においては、外部性のタイプ(生産外部性,消費外部性),および,外部性の程度(経済行動が環境に及ぼす影響の認識度)の違いに着目した分析を行った。個人(親)は自分の消費行動が環境に影響を与えうるということについての認識度はある程度高いが,子への教育投資が来期の生産を通じて環境に与える影響に関する認識度は低いと仮定して家族経済モデルを構築し、教育投資の過剰性・過少性を含む市場均衡の性質について分析を進めている. また、出生数と遺産の環境外部性を考慮したわれわれの過去の研究(Hirazawa, M.,Kamada, K., Sato, T., Environment and Development Economics, 2019)のモデルを用いて、比較静学分析を行った。結果としては、一定の条件下で、排出係数の上昇は出生数を低下、遺産を増加させ、汚染水準を上昇させる。養育費の増加は出生数を低下、遺産を増加させるが、汚染水準を低下させる。 さらに、親の子への遺産と子の居住地選択を考慮した分析にも着手した。戦略的遺産動機を持つ親と二人の子を含む家族において、親がどのように子の間で遺産を分割し、それぞれの子が居住地をどこに決めるかに関するモデルを構築し、遺産分割のパターンと家族の居住地のパターンの関係について検討を行った。遺産は物的資本の原資となり、居住地も所得(生産)に影響するため、環境外部性を伴う可能性がある。今後、環境をモデルに導入することを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による出張の自粛のため、他大学に所属する研究分担者との対面での研究打合せが2023年3月まで実施できなかった。オンラインでの打合せによって研究を進めてきたが、研究分担者とは長年にわたり対面の打ち合わせの中で共同で研究を進めるスタイルをとってきたため、十分に効果的な連携がとれないでいた。 現状では対面での打合せが可能になっているので、進捗の後れを取り戻すべく、精力的に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、教育投資を導入した家族経済モデルを用い、外部性のタイプ(生産外部性,消費外部性),および,外部性の程度(経済行動が環境に及ぼす影響の認識度)の違いに着目した分析をさらに推進する。市場均衡解と社会的最適解を導出し、その比較を行うことにより、環境外部性の存在下での教育投資や出生数の過剰性・過少性を分析する。さらに社会的最適解を達成するための政策デザインを検討する。分析方法については、まず解析的分析を行い、その後、数値分析を行う。 また、遺産分割と居住地選択については、2023年度までに得られた子の間での遺産分割と居住地パターンに関する結果をさらに整理し、その後、モデルに環境を導入する。その際に、遺産と居住地選択の生産を通じた環境外部性、および、遺産と居住地選択との間の相互作用に着目する。 進捗の遅れを取り戻すべく、2024年度においては、2021~2022年度に当初の計画通りに実施できないでいた研究打ち合わせのための出張をできるだけ多く行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021~2022年度に、コロナ禍における出張の自粛のため、研究経費として申請していた研究分担者の研究打合せのために国内旅費を計画通りに使用できなかった。また、海外渡航が困難であったため、研究代表者および研究分担者の学会出席のための外国旅費も使用できなかった。さらに、オンラインによる研究打合せは実施したものの,対面の打合せでなければ困難な部分も多く,研究進捗がやや遅れたことにより、学会で報告するに足る研究成果が得られておらず、研究代表者および研究分担者の国内外での研究発表のための旅費も使用できなかった。また、研究打合せで利用する予定であったノートパソコンもその機会がなかったため、購入を延期した。 2023年度は、出張に関する制約が緩和されたので、進捗の遅れを取り戻すべく、研究打ち合わせのための出張の回数を当初の計画より増やし、また、国外の学会出張も実施した。2024年度においても、2023年度と同様のペースで出張を行うこと、および、パソコンの購入等により、2021~2022年度に消化できなかった分を使用する計画である。
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